【トークライブレポート】
7月18日(水)“地域づくり系”イベント
「なぜ、東京のまちに“プロボノ”なのか?」

2018年秋、サービスグラントは、地域づくり系プロボノ「東京ホームタウンプロジェクト」「地域の課題解決プロボノプロジェクト」を通じ、約30のNPO・地域団体に対して支援を行う予定です。

プロジェクト開始に先立ち、7月18日(水)にイベント「なぜ、東京のまちに“プロボノ”なのか?」を開催。東京ホームタウンプロジェクトと地域の課題解決プロボノプロジェクト、それぞれのプロジェクト事例を通じ、ゲストと共に、今の東京における“まちづくり”のあるべき姿、そしてプロボノの可能性について考えました。

実際にプロジェクトを経験したプロボノワーカーの田中洋さん、久保明日香さん、そして株式会社Empublic代表の広石拓司さんにお話しいただいたトークライブをお届けします。

<概要>
日時:2018年7月18日(水)19:15〜21:15(トークライブ 19:25〜20:15)
会場:FinGATE KAYABA(茅場町)
主催:認定NPO法人サービスグラント

<トークライブ>
●ゲスト
プロボノワーカー
田中洋さん
久保明日香さん

株式会社Empublic
代表 広石拓司さん

●聞き手
認定NPO法人サービスグラント
代表理事 嵯峨生馬


東京都稲城市「矢野口地区介護予防ラジオ体操会」が
最初のプロボノプロジェクトでした


嵯峨:
プロボノワーカーの田中さんと久保さんに、参加されたプロボノプロジェクトについて紹介いただきます。
田中さんは、東京都稲城市の「矢野口地区介護予防ラジオ体操会」の事業評価プロジェクトにプロジェクトマネージャーとして参加されました。会場の皆さん。「ラジオ体操」ってどういうイメージを持っていますか?「ラジオ体操にどういう社会的意義があるんだろう」と思ってしまうかもしれません。一見、なんの変哲もないラジオ体操に、どんな発見があったのか、田中さんからご紹介をお願いします。


田中さん:
田中と申します。普段はコンサルティングの会社に勤めています。このプロジェクト開始当時は、外資系のIT企業でプロジェクトマネージャーとして働いていました。プロジェクト管理の仕事を社会貢献に活かせないかなという気持ちで、プロボノを始めました。
一番初めに参加したが、この矢野口地区介護予防ラジオ体操会の事業評価プロジェクトです。ここのラジオ体操会の皆さんは、ラジオ体操だけをやってきたのではありません。元々は、転倒骨折予防体操の自主グループでした。高齢者の方が転倒して骨折すると外出できなくなり、さらに老化が進んだり、認知症を引き起こしたりという問題につながることがあります。だから、まず転ばないように運動機能を上げましょうと、国が主導で介護予防として行っています。この自主グループが発展してラジオ体操の活動に繋がっていったのですが、このプロボノのプロジェクトは、このラジオ体操のグループが地域社会にどのような効果を生み出してるかを評価するものでした。
評価は、SROI(Social Return on Investment、社会投資収益率)という考え方を参考に行いました。ラジオ体操会の参加者の運動機能が上がった、元気になった、参加者が増えた、そういったことがラジオ体操会という事業の直接的効果にあたります。その効果は、結果として、例えば要介護認定が下がった、稲城市矢野口地区の社会保障費が下がった、そういうものが発展効果として挙げられます。この直接的効果と発展効果という考え方に則って、「ラジオ体操会がどのような効果を出したのかを評価した」というのがこのプロジェクトです。
事業を評価するにあたって、ラジオ体操会という人たちがどういう体制でラジオ体操会を運営しているのか、事業継続するための成功要素は何かを明確にするために、企業の評価に近いことを行ったのが一点、稲城市の住んでいる住民にどのような影響を与えているのかを調査するために、ラジオ体操に参加している人にアンケートを取って定量評価するのが一点と、そして、町内会や行政の方にインタビューをして、ラジオ体操会がどういう影響を与えてるのかってことを評価する、この三点を軸としてプロジェクトに取り組みました。

嵯峨:
どのようなことがわかりましたか?


田中さん:
矢野口地区の要介護認定率が、他地域に比べて非常に低下傾向にあるということがわかりました。矢野口地区は一人暮らしの高齢者が多く、稲城市の中でも高齢者人口がわりと高いにも拘わらず、他の地域に比べて要介護認定率が低いということは驚くべきことです。
要介護認定率が低い、ということは国が介護に対してかけるお金が少ないということになります。矢野口地区は介護予防のモデルとなるようなひとつの効果を出している地域ということがわかりました。

嵯峨:
いろいろなキーワードが出てました。最初に、転倒骨折予防体操がありました。高齢者の方が転倒、つまり転ぶということはどういう意味を持つのでしょうか?


田中さん:
骨折すると若い人でも完全に治癒することは難しい。高齢者の方が転んで骨折すると、それまでのように外を歩ける状態になることはあまりなくて、家で寝たきりまではいかなくても外出しづらい体になってしまいます。骨折して外出しづらくなる、外出しづらくなって人との交流が減ってしまう、という負のスパイラルに陥りやすい環境になると言われています。

嵯峨:
転倒ということが、その後の社会とのつながりを断ち切られて大きな入口になってしまう、だから、まず転ばないようにしよう、そのためにきちんと筋力をつけていこうということですね。それから、自主グループという言葉が出てきました。自主ということは自分たちでやるということですが、自主グループの前に何らかの活動があったわけですね。


田中さん:
ありました。まず行政が運営する転倒骨折予防体操の講座があって、そこで手を上げた高齢者の方が、3カ月間10人のグループで講習を受け、その仲間がそのまま自主グループとして転倒骨折予防体操の活動を継続していました。

嵯峨:
町でサークルが立ち上がって転ばないように健康づくりの活動を行う、ここまで聞くと非常に良いお話ですよね。ただ、自主グループ、特に転倒骨折予防体操は公民館の中などで行っている印象があります。ラジオ体操とちょっと繋がらない感じがします。


田中さん:
転倒骨折予防体操は室内で椅子に座ったまま行います。室内で女性が集まっておしゃべりしながらやることが多く男性が入りにくかった。男性により多く参加してもらうためにはどうしたらいいかを考えた時に、外でみんなが参加しやすい環境だったら男性が増えるかもしれない、ということでラジオ体操を始めたようです。

嵯峨:
女性は町に出てくる、とよく聞きます。男性は出てこない。特に、会社勤めをしていたような男性は本当に地域に出てこないということをどこに行っても聞きます。確かに、屋内で、女性が8、9割を占めるような場所に男性は行きづらいところもありますね。でも家族を含めたて男性も地域で元気になれば、みんなが幸せです。ラジオ体操は屋外で出てきやすいだろうということがあったと思いますが、実際に男性も出てきましたか?


田中さん:
男性が率先してラジカセを持って、リーダーをやって体操することがありました。期待通りの結果になったと思います。

嵯峨:
仕掛け人の女性がいながらもラジオ体操会の会長は男性に任せる形で始まったラジオ体操ですね。そこに事業評価という形で支援したということですが、なぜ、地元の方は事業評価という、ちょっと難しいことをプロボノワーカーに頼まれたのでしょうか?


田中さん:
代表の安西さん、先ほど話に出てきた仕掛け人の女性で80歳ぐらいの方なんですけど、その方が「私たち、一生懸命頑張って活動してるのに評価されない。行政の人たちも評価してくれないし、地域の人たちに対してアピールするポイントがない」ということを悩みにされていました。だから、自分たちのラジオ体操の活動がどういう効果を出しているのかをちゃんと公正に評価してほしいというニーズがありました。

嵯峨:
10年くらい続けてきた活動を振り返ってこれから先の励みにしたい、効果を客観的に数字でも確認したいということですね。そういった中で先ほど「SROI」と言われましたが…


田中さん:
SROIはSocial Return on Investmentです。投資対効果をちゃんと計ろうというROIのソーシャル版です。

嵯峨:
ROI(Return on Investment、投資利益率/投資収益率/投資回収率)はご存知の方がいらっしゃると思います。どのように進めましたか?


田中さん:
プロボノプロジェクトのチームでも勉強しながら効果を測定するためにどうしたらいいかを考え、アンケートを使って定量的に評価する、それを要介護認定率といったデータと組み合わせ当て仮説を立てて立証していく、という作業をひたすら繰り返しました。

嵯峨:
ラジオ体操への参加と社会参加の話がありますね。


田中さん:
ラジオ体操に参加した人は、ラジオ体操以外の活動にも参加し始めるということがアンケートの結果としてありました。何かの活動に参加するとそこで友達ができる、挨拶する人ができる、だから更に新しい世界を踏み出すということが言えるかもしれない、ということが見えてきました。

嵯峨:
ラジオ体操は10分間ぐらいです。そこに来て、終わったらすぐ帰るのではなく、そこで知り合った人たちと新しい町会での活動やサークルを始めるようになったということですね。たかがラジオ体操、されどですね。
そこで、人と人とのつながりができていったということですが、今、社会参加や人のつながりが高齢者の介護予防にすごく大きな効果があると言われています。ひと昔前までは、介護予防というと、ちゃんと食べて体を動かすこと、栄養と運動が大切と言われていました。ところが、今はそれに加えて、社会参加、つまり、人のつながりがその人の健康状態を高める上で非常に重要であるということが、全国的な、かなりの数の調査の中で数量的に証明されてきています。ラジオ体操から人とのつながりが生まれてどんどん社交的な人が増えていく。健康度が上がるということに直結した話になっているんですね。


田中さん:
そうですね。健康度に直結することもそうですが、面白かったのは、ラジオ体操会によって、昔からある地縁の町内会のコミュニティーの他に新たなコミュニティーが形成されて、より地域の発展につながりそう、というデータが出たことです。プロジェクトでは、地域型のコミュニティーの上にテーマ型のコミュニティー、ラジオ体操会のようなものがあって、より地域が発展しているのではないか、という成果物を提出しました。この資料は、代表の安西さんがすごく気に入って、活動のリーフレット等に転載して配ってくださったので、稲城市の矢野口周辺の地域では、プロボノプロジェクトのアウトプットを目にする機会も多いという状況になっています。矢野口地区は30年ぐらい住んでる方が多いんですけど、新しい方たちも参加できるラジオ体操会のようなコミュニティーがあることで、古い住民と新しい住民の交流が生まれて地域が活性化してる、ということがデータからもインタビューからも見えました。

嵯峨:
半年後にこの地区で行われた介護予防体操の集まりに稲城市の市長が来て、安西さんが表彰されたそうですね。プロボノチームが事業評価したことが、パブリックに認められました。


田中さん:
安西さんたちの活動がプロボノをきっかけに日の目を見たということが非常によかったと思います。

嵯峨:
市内の他の地区にも広げていこうという動きにつながったということですね。
どうしても高齢者支援は高齢者に手厚くというイメージがありますが、介護予防というのは若い人にとっても将来の社会コスト下げることになります。また、皆さんのお父さんの世代の皆さんたちが元気で健康に暮らすことは、結局、家族にもプラスな話ですね。今、介護離職という問題もあります。そういったことも含めて、みんなが元気で健康に暮らすということは世代を超えた共通理解になると思います。
田中さん、ありがとうございました。

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東京都練馬区「小竹町会」ウェブサイトの制作を支援しました


嵯峨:
続いて、久保さんから練馬区小竹町会のウェブサイト作成プロジェクトのお話を伺います。


久保さん:
久保と申します。よろしくお願いします。仕事はIT企業で企画管理をしています。プロボノ自体は去年の説明会に参加しまして、このプロジェクトが初めての参加となります。
私が支援したのは練馬区の小竹町会で、支援メニューはウェブサイトの制作でした。チームメンバーは4人でしたが、4人の中でホームページ制作の経験が本業であるのは1名だけ。あとの3名はホームページを作ったことはないというメンバーでした。初めはすごく不安でしたが、ウェブサイト制作が本業であるリーダーが、制作の流れや何を作っていけばいいかを示されたので、メンバー各自ができることを分担して進めていきました。特に大きかったのは『こたけぐらし』という冊子の存在です。町会の根岸さんや若い世代が中心となって町の情報をまとめたこの冊子は、デザインもとても素敵で町会への愛が溢れた内容になっていましたので、これを叩きとしてホームページを作成することができたことはラッキーでした。『こたけぐらし』をそのままウェブ版にするだけでもすごく価値のある取り組みだったと思います。

嵯峨:
元々、小竹町会はウェブサイト持っていなかったのですが、やはり若い人たちにもちゃんと情報を見ていただきたいということで、ホームページを作ることになったのですね。


久保さん:
そうです。あと、町会には、建て替えたばかりの小竹町会館の利用者をもっと増やしたい、町会自体の加入者も増やしたいというニーズがあり、その課題解決のためにホームページが皮切りになればということでスタートしました。

嵯峨:
小竹町会のプロジェクトは、「まちの保育園」を経営している若い方たちが町のためにも活動しようという熱い思いがあって、町会長さんや事務局長さんと一緒にプロジェクトを進めましたね。出来上がったホームページやプロジェクトの様子についてご紹介ください。


久保さん:
取材やヒアリングをまず行い、その結果を資料にして提案をしました。資料は何ページにも渡るものを準備したのですが、資料でご説明してもイメージが湧きにくかったのか時間がかかりました。業務での企業間のやりとりとは異なり、町会の方に理解していただくのはちょっと苦労したところもありますが、今回は実現しなかった企画でも長い目で取り組めるものが形として残ったのはよかったと思います。

嵯峨:
調査もされたのですか?


久保さん:
調査というか取材が中心ですね。和菓子屋さんに写真を撮りに行ったり、地域密着という形が見えるような写真をたくさん集めたりしました。

嵯峨:
ホームページを作る時にどういう提案をされましたか?


久保さん:
若い女性をターゲットにした写真映えがよいホームページにしたいと思いました。今は、ホームページをスマートフォンで見る方が多いので、写真が多くないと、また見ようとは思いません。まずチームで話し合ったことは、若い女性、とくに子育て中の世代が多い地区なので、そういった方々に訴えかけるページにしようということです。

嵯峨:
小竹町会は小竹町会館での文化祭など面白い取り組みをやっていますね。


久保さん:
「小竹の森音楽祭」という年に1回のイベントでは、近くの武蔵野音楽大学などを巻き込んで約500人が集まります。本当に熱い方たちが多く、素晴らしい取り組みを紹介させていただいてよかったなと思います。
それから、TBSの『報道特集』という番組で放送されたことで、今回、町会に加入しますという声もあったようなのでそれは嬉しかったです。

嵯峨:
5月5日に報道特集で、プロボノや新しい働き方が取り上げられて小竹町会にも取材が入りましたよね。
小竹町のウェブページについてご紹介ください。


久保さん:
このウェブページはWixを使って作っています。WixはPowerPointを触るような手順でホームページを簡単に作ることができる無料のサービスです。私たちが心掛けたのは更新しやすいホームページであることと、ずっと続けていくことができるという点です。トップページがずっと変わらない、情報が更新されてないということでは見てもらえません。なので、操作性という部分も考慮しました。
そして、以前からあった『こたけひろば&こたけあそび』というFacebookページは活発に動いていたので、そのままホームページに埋め込むことで、動きがあるというホームページというイメージを出せるようにしました。

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グローバルとローカル
2層化された東京にプロボノがブリッジをかける


嵯峨:
ありがとうございました。広石さん、ここまでのコメントをお願いします。


広石さん:
エンパブリックの広石です。僕たちは、地域から起業する人を増やす、社会起業家を育成する、逆に起業しやすい町をつくるにはどうしたらいいかということをテーマに活動してきました。ちょうど3年前から東京ホームタウンプロジェクトで、サービスグランドと一緒に事務局を担当しています。
ずっとNPOや社会起業家の人たちをサポートしてきたので、プロボノの活動は知っていました。一方で東京ホームタウンプロジェクトに関わって、改めてプロボノと地域の活動について見てきました。先ほどお話にあったラジオ体操の会や町会にプロボノが入ることはすごく意味があると改めて発見したところがあります。最初にその話をしたいと思います。

東京は、2層の東京がある、と思います。とてもグローバルで経済都市の東京と、町会のようなローカル、地域としての東京です。今、千代田区の仕事をしてますが、千代田区の番町や麹町にも町会があって消防団もあるわけです。実は東京にはそういうローカルな部分があります。
どうしても僕たちのようなビジネスパーソンは、経済的側面の東京で暮らしてることが多いですよね。例えばタワーマンションに住んで、買い物は渋谷や原宿に行く。特に町会に入らなくても東京では生きていける。長い歴史の中で経済的な話とローカルな話というのは別なものという扱いがありました。特に東京では、現役世代で仕事が忙しい間は地域のことはしてなくても普通です。「町会入ってないの?信じられない!」みたいな会話は決して会社では起きないわけです。一方で都市型の暮らしがあり、一方でローカルな東京がある。経済的な側面だけでなく非合理的というか、ローカルな世界があるということです。
社会起業家、NPOはテーマ型コミュニティーで、福祉の問題や環境問題はどちらかと言えば経済的側面のテーマ型なのでローカルの東京はずっと切り離されてきました。どうしても地縁活動や地域の活動の中心は、地元でお店をやってる人や退職した人になります。でも、退職してしばらくしてから、そろそろ町会に入ろうかな、と思ったら、中は出来上がっている関係で閉鎖的、だから入りにくい。さらに会長や幹事をやらされそうだから近付きたくない、こういう感覚をお持ちの方が多いと思います。
そういった意味では、ラジオ体操や町会について、ポジティブな話をされてるのはとてもいいことです。高齢の方が体操やっていることは意味のあることだと。さらにSROIという形で、経済的な合理的な視点で再発見するということですよ。
分断されてきた東京に、プロボノの人がブリッジをかけている、それが今回のプロジェクトの意義だと僕は思っています。お2人のお話を聞いていて、そういうところがとってもいいとまず感じました。

嵯峨:
非常に面白いですね。プロボノを通じて、普段出会わないような人たちと出会うことを経験されたと思います。それを通じて発見したことはありましたか?田中さん、いかがですか?


田中さん:
プロボノを始めるまでは、自分の住む町に町会や地域団地があることを全く考えていませんでした。高齢者の知り合いもいないので、高齢の方が何を考えているのかも全く気にしてなかった。稲城市の矢野口では地域で行う子供のための運動会があって、高齢者の方も、子供の親世代も参加して、それを昔から住んでいる地域の人たちが支援していました。自分は気が付かなかったことですが、そういった地域の営み、人の営みというのは意外と身近なところであるのかなと思いました。そうすると、自分の住んでいる町のお祭りを運営してる人は誰なんだろう?実はNPOが関わっていたり、若い人が意外と関わっているんだな、とか。そういった視点で住んでるところを見るようになったことが大きなポイントです。

久保さん:
私も住んでる地域の見方というのがちょっと変わりました。すっかり忘れてたんですけど、子供の時に地域に育てられてきたというのを改めて思い出しました。いろいろな大人に守られて、お祭りやいろいろな地域の活動があってその中で育てられてきました。この練馬区の小竹町にも子供を大切にしたい思いがすごくいっぱいあったので、改めて、自分の地元ではないけれど恩返ししてるような気持ちになりました。

嵯峨:
先ほど、分断されている東京をブリッジするようなもの、というお話がありましたけど、30、40年間サラリーマンをやっていた方が地域活動に踏み込んで、結構、孤軍奮闘されているケースもあると感じています。そういうところにプロボノが応援に行くとすごく喜ばれませんか?


広石さん:
ありますね。田中さん、久保さんがおっしゃったことは、僕もこの東京ホームタウンプロジェクトに関わって思うところでした。
まず認識することから始まります。自分の町で祭をやっていると知ったとしても、まず、誰がやっているかわからない。防災活動もきっと誰かがどこかでやっていると思うけど誰だっけ?介護予防はどうだっけ?と普段は意識しないわけです。
以前に、都会の町でワークショップをしてたら、ある女性が「前は全然興味がなかったのに、最近は、地域の高齢者の問題に興味があります」と言っていました。「なんで?」と言ったら「私、産休取ったんです。前は朝早く会社に行って夜帰ってくる生活だったけど、産休を取って平日の昼間に町に出たらこの町にはたくさんの高齢者がいたって初めて知りました」と言うわけです。産休を取って初めて平日の昼間にスーパーに行って、吉野家に高齢の方たちが入っている姿を見て、「私が住む町も高齢化している」と気付く。「やっと高齢化社会の実感が湧いた」という方がいらっしゃったんですよね。それはそうだと思います。そういった意味では今回、プロボノをやってみて、考えてみたらうちの町だってこういうことやってる人がいる、視野が広がっていく、というのがプロボノのすごくいいところだなと思います。
もう一つ、自分が住んでるところで活動することはハードルが高いですよね。デビューしたら失敗できないという感じがあります。だからまず1回、外の地域に行ってみてほしいと思うんです。違う町に行ってみて、そこの町会の方とコミュニケーションをとることや会社員のOBの方もいる、話しやすい人もいるとイメージを持つことができる。
東京のプロボノならではのユニークな意味とすごく思いますね。

嵯峨:
確かに久保さんと話をすると「絶対に関西出身で東京の方ではない」とわかりますね。関西の言葉をしゃべりつつプロボノを東京で、しかも練馬区でやってるってところがいいですよね。
プロボノを通じて地域と関わるとか認識が新たになります。実際にどういうことに貢献できたと思いますか?


久保さん:
町会は同じメンバーが長く、会長は7年続けています。私たちもそうですが、中にいると外からどう見られてるのかはわからないと思います。第三者が入って町内の良さを伝えたときに、そんなところを見ていたの?そういうところよかったんだね、といろいろな気付きや発見があったようです。そういうことに気付いていただけたことも貢献の一つですし、私たちがホームページを作るときにも、若い人の視点で分かりやすいもの作りましょうと提案することも一つです。

田中さん:
このプロジェクトの成果自体が、行政の方や地域の方に喜ばれたことがひとつの大きな貢献と思ったのですが、介護予防のことを全く知らない40、50代のビジネスパーソンがやってきて、「皆さんがやってることはこういうことじゃないですか?」と質問するとか、第三者が別の観点で介入すること自体が団体にとって非常に大きな気付きになると思いました。
自分も仕事していると凝り固まってしまうことがあります。そういう時に別のところから言われるとほぐれることがあるので、同じようなことが地域社会でも起きていると感じました。

広石さん:
地域で活動している人たちは、案外、聞いてくれる人がいない。いつも一緒に活動してる相手に「本来、自分たちは何がしたかった」とか、「この団体はこういう意味があると思う」という会話はあまりできないです。でも外部の人、しかも30、40代のビジネスパーソンの方が来てくれることはすごく大きい、そういう人たちが自分たちの話を真剣に聞いてくれたということが、実はすごい大きなエンパワーなんですよね。
それはすごくいいことと思います。「子供のころ、周りの人に育てられたっていうことを、皆さんの話を聞いて思い出しました」と言われると感動します。町の人からは「集まってラジオ体操してるだけ」としか見られないし、行政の人からは「皆さん、ご苦労様です。ラジオ体操、いつも暑い中、大変ですね」しか言われない。でも本当は、私たちは介護予防や介護保険費をどう下げるのかとか、町会だけじゃ足りない活動が地域に必要という、結構、建設的なことしてるわけです。でも、どう言葉にしていいかもわからないし、誰も真剣に聞いてくれない。だから、田中さんの発表にあった、「地縁型コミュニティーにテーマ型コミュニティーを重ねることで介護予防を促進します」と言われたら、「言いたかったことそれです!」となります。ずっと一生懸命言ってるつもりなのに全く誰も話かみ合わないところに、ビジネスパーソンのチームが入ってきて、そういうふうに言ってくれると、「言いたかったことはそれ!」という感じが生まれます。
課題解決はプロボノの皆さんがその場に行って、「こうしなきゃだめです。ああしなきゃだめです」と言うよりは、話を聞いて「だったらこういうことですよ。こういうふうにやったらいいんじゃないですか」って還元していただくと、実はそれが地域の人がプロボノに依頼してよかったということになります。
福祉や行政の方もプロボノの皆さんのやりとりを聞いたり、ヒアリングをして整理する姿を見たり、KPI取りましょうと耳すること自体、新鮮なんです。それがすごくいいと思います。

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プロボノは楽しかった!
本当に地域のプロボノというのはいい経験になると思います。


嵯峨:
ヒアリングはいかがでしたか?町会や地域の方に非常に励みになるという話がありましたが、皆さんはどういう気持ちになりましたか?


田中さん:
まず楽しかったです。知らない世界を知ること自体が楽しかったので、引き込まれるようにいろいろ聞きました。当初、聞こうと思ってたことが全く聞けないこともあるんですけど楽しく関係性づくりができました。

久保さん:
私も楽しかったですね。町内会長のインタビューでは昔話がいっぱい出てきて、楽しそうにお話しされてるのを聞くだけでもすごく嬉しかったですし、それがホームページとして形になったことは本当によかったと思います。

嵯峨:
久保さん、最初からそういう話が聞けると期待していましたか?


久保さん:
完全に未知数でした。全然しゃべっていただけなけなかったらどうしようと心配になったこともありました。でも、何回か顔を合わせながら、今日は30分、次に1時間と時間を延ばして、少しずつ話を深める工夫をしました。

嵯峨:
田中さん、どのように楽しかったのか、もう少し教えてください。


田中さん:
僕にとって1回目のプロボノプロジェクトだったので、最初はどういうふうにファシリテーションしようかとか、アジェンダを決めて打ち合わせに臨もうと準備したり、質問を考えたりしたのですが、全くその通りには進みませんでした。打ち合わせの席で、矢野口音頭を復活させるためにこういうことをしたんだよ、という話が20分ぐらい続くこともありました。聞きたいと思ってたことは全く聞けなくても、実は雑談の中にもいろいろヒントがあって、そういうものを拾い集めていくと、地域づくりにいろいろ役に立っている。点と点がつながることを集める作業に面白さがありましたね。

広石さん:
例えば今の矢野口音頭の話でも「すみません。いま、ラジオ体操の会の話なんでその話はちょっと困ります」ではなく、ちゃんと話を聞いたことがすごく大切ですね。僕たちが以前、神田の町のことやっていた時、町会の人から「もっとこうしたほうがいいとか、町会は会計が不透明とかって自分たちだってわかってる。だけど、あなたたちだって、全然知らない人が突然やってきて『あなたたちの運営は駄目だ』って言われたら嫌でしょう?」と言われたことがあります。町会や地域のことをいろいろと言う人もいるけれど、結局、関係のない人に自分たちがわかってることを指摘されることはすごく嫌だということですよね。でも、話を聞いてくれて、私たちのことを応援するという関係性ができた上で、こうしたほうがいいのでは話は素直に聞ける、ということがやはりあります。
実はそこもビジネスパーソンの方にとっては面白い体験だと思います。合理的な答えとか、合理的に進めるとか、ちゃんとソリューソンを提案することだけが物事を進めることではなくて、関係なさそうな話を聞きながら実はそこにもいろんなヒントがいっぱいある。そこで関係性ができて一体感のある仕事ができる。そういう経験も楽しかったと思います。

田中さん:
本当に楽しかったです。全く違う話がつながって最終的に一体感が生まれたことがよかったです。

久保さん:
町長は相撲が大好きで、本当にその話だけで1日終わるんじゃないか、という日もありましたけど、愛情とか、町会の仕事をどうして長くされてるのかとか、いろんなことにつながっていきました。まずご本人が好きなものや興味があるのものから聞いていくことが楽しかったです。

嵯峨:
いろいろなところにヒントがあるというスタンスで聞くことが大事ということですね。ありがとうございます。最後に、今日いらっしゃった方にメッセージをお願いします。


久保さん:
私は母が京都で地域活動をすごく活発にしています。これまでは、なにが楽しいんだろうと正直思っていました。町会のプロジェクトに関わってみると反応がダイレクトになんでも返ってきます。良いものは良い。嫌なものは嫌、だから受け入れられないという頑固な部分もあります。でも、町会の方は、若い人がこんなに熱心に私たちに関わってくれているんだ、ということにものすごく喜びを感じてくださいます。だから、そこの人の関わることで何かを生み出したい。喜びを感じたいという方には、本当に地域のプロボノというのはいい経験になると思います。

田中さん:
プロボノをする前は、地域団体にはどんな人がいるのだろう、と考え過ぎていたのですが、実際に支援していると、プロジェクトの途中で、例えば般若心経について延々と1時間ぐらい語る面白い方と出会ったりします。そういう人と向かい合っていると自分の興味関心も広がります。一度扉を開いてみると違った面白さが見えるかもしれません。

広石さん:
僕たちは地域に暮らしています。実は、その町に住むという時点で町をシェアしてるんですよね。何となく僕たちは、建物を借りた、部屋を買ったと思っている。実は、自分たちは周りに住んでる人たちやコミュニティーと共に存在しているということを忘れています。東京という町は、足元をあまり気にしないで生きていけます。
地域に関わってみると、こういう人がいる、こういう地域課題があるということがわかります。高齢者の方と関わる機会にもなります。
東京ホームタウンプロジェクトでは、よく親と自分の老後とのことが気になったという人がいます。町会のプロジェクトでは、自分の子供や自分の子育てについて考えた、という人がたくさんいます。そういうところが魅力です。プロボノは、誰かを助けることであると同時に、皆さんの暮らしや仕事を見直す良いチャンスになると思っています。

嵯峨:
ありがとうございます。町をシェアするということもありますし、自分の人生観、あるいは仕事に色々なフィードバックがあるということですね。エッセンスが凝縮されたコメントだったと思います。
ありがとうございました。

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