本職ではない役割で参加して強みを発見
戸嶋莉子さん(デザインコンサルティング会社勤務)
プロボノでの役割:コピーライター
参加プロジェクト:School Voice Project(2024年)
業務経験を活かせる複数の役割でプロボノ登録
―プロボノに関心を持ったきっかけは?
プロボノプロジェクトに参加した当時は、転職エージェントで働いていました。プロジェクト参加前の頃、部署が異動になりプライベートの時間が作りやすくなったと同時に、今後どのようにキャリアを広げられるかが見えておらず、不安を感じていました。そこで、社外で何か挑戦したり、新しいノウハウを吸収できる場があれば良いなと考えていました。
最初に社会人インターンを探してみましたが有償のものが多く、前の会社では副業禁止だったのでボランティアを探したところ、プロボノを知りました。単発のボランティアよりもプロジェクトに深く関われる点が自分に合っていると思い、プロボノを選択しました。
いま社会人4年目ですが、会社の中にいるだけでは視野が広がらなかったり、自分の現在の立ち位置や不足している点も見えにくいと感じていたので、とにかく様々な方にお会いしたいという気持ちがありました。
―これまでのお仕事経験について教えてください。
その頃の業務内容としては、業務推進部にてご登録者のみなさまの履歴書や職務経歴書のデータメンテナンスなどを行っていました。
今回のプロボノプロジェクトでは「コピーライター」の役割で参加したのですが、いまご説明したとおり、普段の仕事で直接的にコピーライティングをしていたわけではないんです。プロボノワーカーとしてのポジションの希望を出す際にお伝えしていたのは、転職エージェントとして求人票を書いたり、以前はウェディングプランナーをしていて提案書を作成したりする業務経験があるということです。全体としてはマーケッター職の業務内容が多かったかもしれませんが、プロボノ登録ではコピーライターとしても対応可能であるとお伝えしていました。結果として、プロジェクトと同時期に、社内の新チームの立ち上げを担当することになり、その中で、スカウト文面の作成やキャッチコピー付けなども担当していたので、実務とのつながりも実感することができました。
仕事では部署に配属されると、そこでの仕事の専門性を高めていくと思いますが、プロボノでは、自分が仕事で培ってきた“要素”を持つポジションに柔軟にアサインしていただけるのだなと、実際にコピーライターとして参加して思いました。
飛び込んだ先で、共感する団体との出会い
―はじめての参加にあたり、不安はありませんでしたか?
私は立候補前に、サービスグラントが開催した「新プロジェクト発表会」とその後の交流会に参加してプロジェクト情報などを収集しました。特に友達を誘って参加したわけでもなかったので、最初はとても緊張していました。ですが、年齢も若く、プロボノも完全に初めてだったからこそ、思い切って飛び込めたのかなと思っています。
その場で新しい方にお会いするたびに、「まだ社会人3年目でプロボノも初めてなんです。何も分からないのですが」と自己紹介して、色々教えていただくことができました。それに対してネガティブな見方をする方はもちろんいらっしゃらなかったので、安心して自己開示していくことで、より深い交流ができたと感じています。
―今回のプロジェクトに立候補した理由を教えてください。
「School Voice Project」は、全国の教職員の方々が集まって立ち上げた、学校をボトムアップで変えていこうというプラットフォームで、学校現場の声を見える化し、課題解決へとつなげる政策提言・ロビイングを軸に活動する団体です。
この団体を支援するプロジェクトに立候補したのは、自分が興味を持てる領域だったという点が一つです。もともと教育に興味があり、高校生の頃は教職を目指そうと考えていましたし、1回目の転職活動の時も、教育商材を扱っている会社や社会人向けの教育を行っている会社を志望していました。
また、団体が掲げていらっしゃる課題や「学校現場の声を『見える化』し対話の文化をつくる」というミッションについても、私の友人には中高の同期で教員になった人が多くいて、彼らから聞いていた話とも通じるものがありました。本当に現場レベルで必要とされているものなのだと感じたのです。
そこで今回のプロジェクトを通じて自分がさまざまな話を聞くことで、そうした人たちに広めていくことができるという点と、逆に現場の声を聞き、それをプロジェクトに反映できるという相互作用があるのではないかと考えました。
自分の見たもの聞いたもの、仲間を信じて進む
―コピーライターの役割において、どんな工夫をされましたか?
今回のプロジェクトの成果物は、団体の行う事業のうち「エンタク」という、学校現場をよりよく変えていきたいという教職員と学校のためのオンラインコミュニティの活動内容や価値をわかりやすく説明する資料を作成するというものでした。
その中で工夫した一つは、「教員の皆さんの生の声がしっかりとやり取りされる場でありたい」という、「エンタク」に込められた団体の思いをどう反映するかです。新しく参加される方だけでなく、すでに会員の方々にも「エンタクってそういう場所だよね」と思ってほしいと、団体の方が最初の段階で強くおっしゃっていました。そこでとにかく現場を見て、その雰囲気を体感することを意識しました。エンタクのグループにも入れていただけたので、イベントに参加したり、皆さんの発信内容を見たりしました。チームで行うヒアリングに加えて、私自身が一番温度感を直接感じられるようにと考えて行動しました。
もう一つは、私はコピーライターが本職ではなかったので、クリエイティブの打ち合わせで様々な案を出すことになった際、コピーライティングのノウハウを体系的に学びたいと思い、実行したことです。コピーライティングに関する書籍をいくつか読み、これまでに得た現場の温度感のある言葉たちを、どのように構成していくかを考えながら資料を準備しました。ですので、体感的な部分と論理的な部分、その両方を意識して取り組んでいたと思います。

プロボノプロジェクトの最終成果物(「エンタク」の紹介資料)
―プロジェクトを進める中で、特に印象に残ったことはありますか?
最も印象的だったのは、最初の段階で団体の代表から活動内容について伺った話と、実際にエンタクに参加するユーザーの方々から出てくる話、そしてエンタクをどのような場として使っているかという点が、きちんと一致していたことです。
通常、団体やユーザーの規模が大きくなればなるほど、ある程度の齟齬が生じたり、掲げていたものがブレたり、末端に正しく伝わらなかったりすることがあると思うのですが、エンタクの場合はそれが全くないと感じました。現場を見たりヒアリングする中で、参加する皆さんがエンタクで掲げるものに心から共感して参加されているのがわかり、今後会員が増えても方向性がブレてしまわないようにこれをしっかりと伝えていかなければと思いました。温度感を直接感じたからこそ、エンタクの価値を大切に、正しく伝えるにはどうすれば良いかを考えたいという、私自身のモチベーションにも繋がったと思います。
また、エンタクの「はじめまして会」に参加した時、教科書を出版する会社で働いている方がいらっしゃったことも印象的です。エンタクには、教職員などではない人もきちんと受け入れる土壌があり、自分の中で変えたいと思うきっかけさえあれば、誰でもいていい場所なのだと感じました。
私も「教育業界のことは分からないので…」という気持ちが少しあったのですが、その方がお話されているのを見てからは、あまりそこを気にしなくてもいいのかなと思うようになりました。自分が目で見たものや聞いた言葉を指針に作っていってもいいのかな、と思えるきっかけだったと思います。
―プロボノチームの進め方はいかがでしたか。
私以外のメンバーはプロボノ経験者の方ばかりでしたので、これまでの参加経験からそれぞれ知見をお持ちでした。一方で、私は初めてのプロボノ参加だったこともあり、比較的自由にやらせていただきました。分からない部分や手が止まってしまっていると感じた部分は、発信すればきちんと拾ってくださる方ばかりでしたので、途中からは「自由に色々言ってみよう」「とりあえず試してみて、どんな反応がくるか見てみよう」というスタンスで動けるようになりました。それは私自身の視野を広げる機会にもなったと感じています。
プロジェクト序盤はマーケッターのメンバー2人を中心に調査設計を進めて、プロジェクト後半は、デザイナーさんと私がメインでクリエイティブ関連の内容を進めました。そこではチーム内でかなり密な連携があり、例えば、調査結果を改めて確認したい時や、制作フェーズになって出てきた軸で新しい角度から調査結果を見たい時などは、マーケッターの方が積極的に協力してくださり、内容をまとめて送ってくださいました。後半はチームメンバーが相互に影響を与え合うような関係性ができていたと感じています。
自分の軸がクリアになるプロボノは、転職期にもおすすめ
―はじめてのプロボノ、はじめての役割での参加はいかがでしたか。
すごく楽しかったです。もともと、言葉を書いたり言葉を使って考えるのが非常に好きなので、それを実践できて、かつ何かしらの役に立つというのも嬉しかったです。
また、今回の経験が、その後の本業での文章作成に役立ったり、私自身のビジネスSNSのキャッチコピーを考えてみたりと、自分の仕事だけでなく、私生活においても「書くこと」がより楽しくなったと感じていて、非常に良い機会をいただいたと思います。
じつは最近になって転職し、来週からはデザインコンサルティングの会社で、自社採用の人事を担当することになっています。転職活動の中で、次に働く会社からスカウトをもらった際も、「(ビジネスSNSに)キャッチコピーが付いているのが面白いと思って声をかけました」と言っていただけたので、そういう意味でも良かったのかなと思っています。
今回のプロジェクトの中で、直接顔を合わせて話す中で情動的なものを感じ取り、それをコピーライティングの方法論に則って理論的に形にするという作業が、やはり得意で好きなことだと再認識できました。自分の強みを見つける機会でもありましたし、それを発信していく方法を改めて習得できた機会でもあったと思います。
また、私は性格的にきっちり100%作り込んでから進めたいタイプなのですが、今回に関しては、チームの皆さんの胸を借りるつもりで6~7割で作り上げて、団体側にも「ここが決められないです」と相談することもできたので、自分の動き方や性格の面でも新しく学べた部分があったと思います。それを丸ごと「いいね、いいね」と受け止めてくださる皆さんだったので、すごくありがたかったです。
自分が肩肘張りすぎないようにする、プロボノでのこのスタンスの在り方を、もっと普段の仕事でもやってもいいんだなと気づけました。これから働く会社では、肩の力を抜いて、フラットに色々と話せる関係を築きたいなと思います。
―プロボノ参加を通じての一番の変化は何でしょうか?
仕事にもプライベートにもつながる自分の興味関心と、そこに活かせる自分の強みが見えたという点が一番大きいと思っています。今回の参加を通じて教育分野への興味を再確認し、転職活動にあたっても、関わる人たちへの教育やよりよい環境づくりを推進していることが会社を選ぶ際の理由の一つになりました。
プロボノプロジェクトの期間で、あらためて自分の指向性を整理でき、自身のこれまでの経験を改めて振り返りつつ、それがチームやプロジェクトの中でどのように活きるのかを客観的に見ることができました。
―まだプロボノを経験していない人に、ヒントやメッセージがあればお願いします。
「プロボノは“大人の社会科見学”」と聞いていて、私にとっては本当にその通りになったなと思っています。新しい業界を知ることもそうですし、本職として経験してこなかったポジションで参加したからこそ、新しい職種を経験する機会も得られました。これは一般企業ではまずないことだと思います。
プロボノは、転職期間中や準備中にものすごくおすすめだと思います。自分の思考の整理に一旦プロボノをやってみて、そこから軸が見えた上での転職活動はすごくクリアになってやりやすくなる。私の場合は「この会社に共感できるな」「ここなら強みが活かせるな」といった自分の考えがかなり明確になりました。
また、興味があるけど仕事にしてこなかったこと、できなかったことなどに挑戦する機会としても、プロボノは非常に活用できると思いました。「のぞいてみる機会」や「やってみる機会」、そうしたステップだと思って飛び込んでみると、そこで出会う方々は本当に皆さん温かくて、経験豊富で、私のような未経験者でも優しく話を聞いてくださる方ばかりでした。
一度足を踏み入れてしまえば、あとは本当に自然と道が開けていくというか、支えてくれる人がたくさんいると思います。少しでも「やってみたかったこと」や「見てみたいもの」がある人には、すごくおすすめしたいです。
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