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開催レポート「越境体験×社会課題解決=プロボノ 事例にみる企業導入の価値と可能性」

 

未知の環境に飛び込み、新たな視点を得る「越境体験」は、個人の成長や企業のイノベーションを生み出す鍵となります。その越境体験の一つとして、近年注目されているのが「プロボノ」です。

 

サービスグラントでは、職業上の経験やスキルを活かすボランティア「プロボノ」を通して、社会課題解決に取り組むNPO等の運営基盤強化を支援しています。プロボノは企業の社会貢献や社員研修の枠を超え、ビジネススキルを活かしながら社会課題解決に挑戦できる貴重な機会を提供します。

 

イベントでは、人的資本経営時代における新たな人材育成の形として、実際にプロボノを活用した研修を導入したリコーリースの人事担当者やプロボノ経験者を招きリアルな体験談をお届けしました。

また、導入した国内大手8社横断調査のデータをもとに、プロボノが企業や社員にもたらす変化と価値を解説しました。

 

本レポートでは、経験者トークを中心にお届けします。

※プロボノ導入企業 国内大手8社横断調査のデータを含む投影資料をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

 

開催概要

 

日時:2025年4月16日(水)15:00-16:30
開催方法:ハイブリッド(会場&オンライン)

プログラム:
1️ 企業のプロボノの導入パターンと事例
2️ リコーリース人事担当者&プロボノ参加者による経験トーク
3️ 数字で見るプロボノ導入効果

 

 

リコーリース人事担当者&プロボノ参加者による経験トーク

 

プロボノ導入企業のみなさんの導入動機はさまざまですが、特にESG、人的資本経営、越境体験、自律型人材育成などのキーワードが注目を集めています。協働企業のみなさまのお話からも、社員の専門スキルを活かして社会貢献をしながら人材育成につながる点で、プロボノにご期待をいただいていることがわかります。

また、経団連の調査によると、企業が社会貢献活動に対して「経営理念やビジョンの実現」「社員の成長」に期待する意識が大幅に高まっており、企業行動憲章の改訂がなされたり、人的資本経営の実現が必要とされている背景もあります。

 

そうした背景のなかで、今回、実際に「社会課題解決型 越境学習プログラム プロボノリーグ」を導入されたリコーリース株式会社さんにお話を伺いました。

 

 

ご登壇者:

森 政剛さん(リコーリース株式会社 グループ人財統括本部 人事部)

青木大輔さん(リコーリース株式会社 エリア営業本部  医療・ヘルスケア営業部  HaaS営業課)

 

左から森さん、青木さん、サービスグラント事務局 大森(進行)

 

異業種混合チームでの越境体験・360度評価が導入の決め手に

 

――プロボノリーク選択の理由とご期待について教えてください。

森さん:決め手は異業種混合と越境体験でした。4日間というのがボリュームとしてもちょうどいいというのも理由の1つとしてありました。また、サービスグラントさんは人材育成の解像度が最も高かったのが私が感じたところで、プロボノリーグに限らず、どんな研修も参加してすぐにパワーアップするということはなく、重要なことは参加した後の内省や他者からのフィードバックがあることだと思っています。サービスグラントさんでは、360度のサーベイを研修前後でとってくださるというのがよく、またフォローやフィードバックも非常に丁寧だったことが実際に導入してよかった点です。

 

――プロボノリーグは、合計1.5カ月の間で社会課題解決に取り組む団体の運営基盤強化に取り組み、人材育成を図るプログラムです。集合研修の間の期間は成果物作成に向けたチーム活動をしていただきます。社会課題解決に取り組む団体さんの一員として、さらに異業種混合チームで1.5カ月取り組んでいただくということで、二つの越境ができることが特徴となっています。

プロボノリーグの詳細はこちら 

 

――続いては、実際にご参加された青木さんにお伺いします。リコーリースさんでは手挙げ制でのご参加とのことでしたが、どのようなきっかけで参加されたのでしょうか?

青木さん:元々、越境学習に非常に興味を持っていました。ずっと営業をやってきましたが、バックグラウンドがない環境で何ができるのかと、手を挙げさせていただきました。

 

――実際に参加されたプログラムをご紹介いただけますか?

青木さん:2023年度にプロボノリーグに参加し、一般社団法人ピーペックさんをご支援させていただきました。ピーペックさんは「病気があっても大丈夫」という想いで、たとえ病気になっても、仕事や生活で何かを諦めることがないような世の中になるよう、当事者の声を世の中へ発信する活動されており、今回は特に心臓に疾患をお持ちの方へ向けた取り組みについて、ご一緒させていただきました。当事者の声をもっと広げていきたいという中で、どこをターゲットに、どのように広げていくべきかという課題に対し、健康経営企業へのアプローチを軸にご提案。成果物としては、具体的な企業のアプローチリストと、営業資料としてリーフレット、パンフレット、メディア活用の提案書をご納品しました。

メンバー5名で、男性・女性混合で年代もさまざまなチームで取り組みました。

 

――集合研修の間の2週間、チームでの自主的な活動はどのようにされていましたか?

青木さん:4日間だけですと、ピーペックさんへの適切なご提案ができないということで、各自タスクをもって、チームで個別に集まる時間も持ちつつ、週に一度はオンラインで集まって、提出間際には2-3日に一度集まって成果物を仕上げていきました。

 

――業務時間内での活動を認められている企業さんと、時間外で活動される企業さんとがあった中、活動時間はどのように工夫されましたか?

青木さん:役割は明確にしました。こういう提案をしたいというゴールを設定して、必要なことを分解し、タスク分担をしました。私はチームの中でリーダー役を拝命していましたので、まさに分解、分担という役割を実施しました。

 

――支援先団体の反応はいかがでしたか?

青木さん:地域創生の文脈でのコンサルティングに近い内容だったので、事業展開方法や方針への助けになったとお声をいただき、成果になったのかな、やりがいがあったなと感じました。

 

 

他者からの声で強みが明確になり、本業でのアクションにつながる

 

――得られた気づき・印象に残った学びについてお聞かせください。

青木さん:大きく二つあります。一つは、自分の資質・ポテンシャルに気づけたことです。リーダー役を担うなかで、越境学習で初対面の人とチームを組んで、クライアント(支援先)のお悩みを解決していこうとなった時に、自分がリーダーシップをとる、まとめることを得意としていることが気づきになりました。

もう一つは自分が至らなかった部分に気づけたことです。私の場合、ポジティブな面の裏返しで、リーダーシップをとってプロジェクトを前に進める方向に動いてしまい、よりじっくりと社会貢献につかるアクションをしてもよかったのでは、という声もフィードバックでいただきました。また、自分のやりやすいやり方で動いてしまうところがあったので、もっと自由に柔軟に動いてもよかったという声もいただき、自分はそういうタイプなんだ、と気づけました。

 

――「普段と違う環境で、自分の力が通じるのか」と参加された中で「通じた」という経験が得られ、さらにこれからのチャレンジ・課題にも気づかれたのですね。

その後、ご自身の職場に帰って、何か変化を感じられたことはありましたか?

 

青木さん:あくまで営業担当なのでパーソナルな変化ですが、一つは自分でルールを変えてしまうところがありましたので、営業においても、まずはしっかりお客さんの声を聞くように意識を変えて取り組めるようになったと思います。もう一つは、リーダーシップをとれるという強みがあるのであればと、組織の方針づくりの時に、「こういうことをやりたい」「こういうことをやらせてほしい」など、組織の在り方にも声を上げられたのは変化だったと思います。23年度にプロボノリーグに参加して、2024年度の方針策定に加わった結果、過去最高の営業実績を上げられたのは、参加して成長したことが実績につながったのかなと思っています。

 

――青木さんの他にも、社内の参加経験者に、変化の兆しがある方はいらっしゃいますか?

森さん:副次的な効果かもしれませんが、青木は自分の強みが分かって自信がついたという話ですが、他のメンバーでは、自分のキャリアの解像度が高まったというアンケート結果がありました。どの社員も5年後10年後の自分のキャリアがどうなっていくかと考えていますが、その解像度が高まったという声がありました。時として社内においても、「自分の強みかなぁ」と思っていることを、残念ながら直属の上司からフィードバックを受けられない、ということもあります。それが、プロボノに参加して、会社のメンバー、支援先団体の方から直接褒めていただくととても自信がつく。例えば、「自分はピッチャーをやっているのだけど、実はなんとなく内野手向きじゃないかなと思っていた。そこに他の人からも内野手向きだよ! と言ってもらえたので、内野手として飯を食っていくと決めました!」というような社員の声もありました。人事としては、リーダーには社員の小さな変化に気づいてほしいと考えています。半年や年に一度評価はするのですが、それは、どうしても最終的な成果を何点でつけるという評価になってしまう。でも、日々のメールの書っぷりが変わったな、などの小さな変化があるはずで、そうした変化に対しても常に気づいて褒めてあげられるとよいのですが、なかなか難しいことではあります。そうした背景から、外の方々から強みや良いところを言語化してもらえたことで、自分のキャリアが明確になった、という参加者の声は多かったです。

 

――その他にも、変化を感じられたことはありますか?

森さん:人事側として意図して仕掛けたところでは、参加後こそ大事ということで、参加者が集まって事後ミーティング、オフ会を人事主催でランチミーティングをして、感想をシェアする場を作りました。また、参加者、上司、人事での3者面談をしてのすり合わせもできました。参加者同士がコミュニティになり、社内で意識の高いサークルがいくつも自発的にできたことは、すごくうれしい結果だと思っています。

 

――青木さんが参加経験について、個人的に社内で共有する機会もありますか?

青木さん:組織内でも共有しつつ、営業における動き方、業務内の実績で自分が目立つことで、「この人プロボノやってたんだな」と見てもらえるように日々取り組んでいるところです。

 

 

変革を求める企業にとって、越境学習は体質改善につながる”漢方薬“

 

――今後の人材育成、組織開発の展望についてもお聞かせいただけますか?

森さん:今回のようなプログラムはリコーリースとしては“漢方薬”のようなものだと思っています。即効性はない、ただ、やり続けることで体質を変えることができるのではないかと。リコーリースは強固なビジネスモデルを持っているが故、安定志向で、のんびりしていて、やさしくていい人が多い。そんな風土を変革、変異すべきフェーズにあります。現時点で、プロボノリーグの参加者は、全社員約1000人のうち10人なので1パーセント。変わってきたと言ってもまだわずかなので、青木のようなキラキラが刺激になって、周囲に変異を促し、波及させていけるように仕掛けていかなくてはと思っています。

 

――最後に、イベント参加企業のみなさまへのメッセージをお願いします。

森さん:人事の責任者の方は、みなさん同じ悩みを抱えていらっしゃるのではないかと思います。経営からは人事の成果、教育投資の成果とは何か?と問われますよね。そんな中でも、やり続けると意味が出てくる“漢方薬”はたくさんあっていいと思っています。また、内向きな社風の当社にとって、越境によって社員に外に向かって人脈を作ってもらうのはすごくチャレンジングなことでした。しかし、外向きの力はビジネスにおいて重要だと思っていますので、同じような悩みを抱えている企業のみなさんはぜひチャレンジいただけるとよいのではないかと思います。

 

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