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School Voice Project(事業紹介資料)

活動の価値を再定義し、人から人へ自然に広がるパンフレットに

 

School Voice Project 理事・発起人 武田緑さん

 


 

支援先団体:NPO法人School Voice Project
プロジェクトの種類:印刷物(事業紹介資料)

 

※この記事はSchool Voice Project 理事・発起人であり、本プロボノプロジェクトを担当された武田緑さんへのインタビュ―をもとに作成しています。

 

人が増える事が大切。そのためには活動の価値を改めて定義したい

 

――School Voice Projectの活動について教えてください。

 

武田さん:School Voice Projectは、「学校を大人も子どももしあわせな場にしたい」という思いをビジョンに掲げていて、そのために教職員のエンパワーメントをミッションとしています。理事なども含めて、現職の教職員が多くメンバーとして活動しています。
活動は、具体的には大きく二つを中心においています。
一つ目は、アンケートサイトなどを通じて学校現場の声を集め、世の中に発信したり行政に届けたりするロビイング的な活動です。制度が変わるのを待つのではなく、出来るところから変えていこうという現場サポートの取り組みです。
二つ目は、オンラインコミュニティ「エンタク」で、小学校から高等学校の年代までの教職員が中心となって参加し、教員が相互に学び合うコミュニティを醸成しています。

 

――プロボノプロジェクトへ応募したきっかけは?

 

武田さん:大阪の箕面市にある「暮らしづくりネットワーク北芝」というNPOに所属していた時期があり、サービスグラントのチーム型プロジェクトでお世話になったことがありました。10年ほど前の事で、私自身は担当ではなかったのですが、記憶に残っていました。
少し前に、ベネッセこども基金の青木智宏さんに団体運営について相談した際に「プロボノを活用してみては?」と勧められたことがきっかけで、本格的に検討し始めました。
サービスグラントの長期チーム型のプロジェクトを活用したいと考えていのですが、こちらにもある程度の覚悟や準備が必要だと感じていたので、タイミングを見計らっていました。そして昨年、ようやく踏ん切りがついて、応募しました。

 

プロボノプロジェクトのミーティングの様子

 

――申請を頂いた時は「事業計画立案」でのご相談でしたが、実際のプロジェクトは、事業紹介資料の作成に変わりましたね。

 

武田さん:School Voice Projectには専従スタッフがおらず、私自身もフリーランスとしてほかの仕事をしながら事務局を担当しています。一緒に活動しているメンバーも現役の教職員なので、経営的な視点がそこまで厚くないという現実もあり、経営戦略やマネジメントを十分に持ちきれていない感覚がありました。なので、最初は壁打ちのようなかたちで事業計画を整理できたらという気持ちで申請しました。
ただ、その後の審査等の過程のなかで、マネタイズを含めた様々な課題感が出てきて、まずは「エンタクに人が増えること」が非常に重要だという気づきがありました。
財政基盤やミッション達成の観点からも、エンタクが最優先、だけれども、その価値を定められたり、言語化できていない感覚もあって、スコープを事業紹介資料に変更しました。

 

 

「そう見えていたんだ」。客観的な指摘からの学びを表現に活かす

 

―― プロジェクトが進む中で、不安に思われたことなどはありませんでしたか?

 

武田さん:いいえ、不安は特になかったです。最初のころはプロボノチームのみなさんから質問をたくさんいただいて、こちらから合っているところや少し違うところを調整したり、材料を提供したりしていくような感じでした。「こんなに丁寧にやっていくんだ」、と驚きましたが、そのおかげでその後のステップがスムーズだったのかなと今は思っています。
プロジェクトの進行管理については、プロジェクトマネージャーの方がタイムラインをひいてくれて、リードしてくださったのがものすごくありがたかったです。想定よりプロジェクト期間は長くかかってしまいましたが、実働時間が長かったわけではなく、他の活動との調整などもあって待たせてしまった部分があったかと思います。で活動が基本的にオンラインであることもあって、打合せはすべてオンラインで行いました。今思えば、1度くらいは会いたかったなと思いますが、特に困ることはありませんでした。コミュニケーションを普段メンバーと使っているSlackで行っていただいたので、情報が流れず、管理もしやすくて助かりました。

 

プロジェクトの方向性を確認し、調整を図るための中間提案

 

―― 成果物が出来上がるまでの間、ヒアリングや調査の過程で、発見や気づきはありましたか?

 

武田さん:印象に残っているのは、プロボノチームの方が、エンタクのサービスについて知人の先生にヒアリングしてくださった事です。「意識高い系に見えて、私が入っても大丈夫なのだろうかと不安になる」という声があったそうで、それを聞けた事は大きな気づきでした。
エンタクに集まってくれている先生たちの中には、普段の仕事だけでも手いっぱいなのに休みの日にまで学ぼうとする意欲的な人も多くいます。活発的で前向きな発信があると、「すごいね」となって、「すごくないと入れないのかな」と敷居が高く見えてしまう。気を付けているはつもりではありましたが、実際に指摘をもらったことで、外からはそう見えるんだなと、勉強になりました。
また、保護者やフリースクール関係者の方など、学校外の人たちも参加できるのがエンタクの特徴ですが、そうした方々から「応援したくて入っているけど、どう振る舞えばいいかわからない」という声があったことも、重要な気づきとなりました。
普通の先生たちにとっても、セーフティネットになる場所でありたいし、実際入ってみるとそんなに敷居が高いという訳でもないはず。それを上手く伝えていきたいと思いました。

 

――プロボノワーカーの第三者としての視点は成果物に活きたでしょうか?

 

武田さん:今回のプロジェクトを通じて、プロボノワーカーのみなさんが、私たちの運営やコンセプトについて丁寧に理解しようとしてくださいましたし、客観的な視点で提案をしてくれた事もとてもよかったです。プロボノのみなさんがピックアップしてくれた言葉や表現が、私たちには当たり前になっていた「らしさ」をすくい上げてくれたように感じました。
パンフレットにまとめられた「エンタクをあらわす10の言葉」という表現の仕方などは、私たちだけでは絶対に出てこなかった上手い表現だと思います。抽象度が高いけど、大事な部分の雰囲気が伝わりますよね。

 

完成したパンフレットの1ページより「エンタクをあらわす10の言葉」

完成したパンフレットの1ページより「エンタクをあらわす10の言葉」

 

武田さん:パンフレットの使い方についても、「イベントなどで一斉に配布する」というよりは、「現メンバーから信頼する誰かに、“あなたに合ってると思う”と手渡ししていく」というコンセプトになっています。顔の見える関係の中で、人の温度と一緒に伝播していくようなツールがエンタクらしさもあっていいんじゃないかと。これも、プロボノの方からの提案だったと記憶しています。
直接的なものではないですが、サービスグラントにお付き合いいただいている期間の中で、エンタクがとても活性化してきました。何か動いてきたなと感じています。このパンフレットも、ただサービスを受ける人のためではなく、「一緒に学校を変えていく仲間」の輪を広げていくためのツールになればと思っています。

 

提案

プロジェクトの方向性を確認し、調整を図るための中間提案、制作提案等を経ながら進行。

 

――今後に向けて、別の課題やプロボノで取り組みたい事はありますか?

 

武田さん:広報全体のガイドラインやマニュアル作成ができれば、と思っていますSchool Voice Projectでは、様々なコンテンツを相互に連携していて、エンタクで話題になったことをアンケートにしたり、アンケートをロビイングに活用したりしています。その広報全般の戦略づくりと、実務を整理して誰でもできるようなマニュアルに落とし込む必要があると感じています。継続的に関わってくれる人がいてくれるとありがたいですが、まずは「GRANT」を活用することも検討したいと思います。

 

――最後に、これからの活動についての思いを聞かせてください。

 

武田さん:私自身の思いとしては、ずっと変わらないのですが、未来に希望も持ちながら子ども時代を送れることを保証するような学校にしたいと思っています。「自分たちには何かを変えていける力がある」とか、そういう実感みたいなものを持ってもらいたい。そのために、先生たち自身にもそういう手触りや実感を取り戻す必要があるんじゃないかと思っています。
実際には、何かをやろうにも難しい事や構造的な問題もたくさんあります。でも、先生同士も、行政の人とも、立場が違う人たちが対話をする機会は増えなければならない。すぐには変わらなくても、声に出せる、応答される、対話できる、「じゃあどうしよう」と一緒につくっていける、そういう学校教育になればいいなと思っています。