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東京都障害者スポーツ協会 プロジェクトチームのみなさん

   

ご縁は続くよ、どこまでも。プロジェクトを起点に生まれた、パラスポーツ×プロボノのアフターストーリー

 

 

支援先団体:
 東京都障害者スポーツ協会 藤野 彩花さん
プロボノチーム:
 プロジェクトマネジャー 塚原 宏樹さん
 マーケッター 有村 紘輝さん、原 徳子さん、田川 紗希子さん、上田 仁智さん
 アカウントディレクター 北場 彰さん

 

実施プロジェクト東京都障害者スポーツ協会との協業による、都域障害者スポーツ団体向けGCの正しい理解促進と継続したアセスメント体制確立にむけた支援(2023年)

 

※この記事は2025年3月12日開催のオンラインイベント「大人の社会科見学 online 2025 Vol.1|パラスポーツ×プロボノ 団体&チームの越境体験を話そう|プロジェクトアフタートーク」の内容を編集しています。

プロボノプロジェクト発足のきっかけはどのようなものでしたか?

 

藤野さん:私は東京都障害者スポーツ協会の事務局として、都域の障害者スポーツ団体を対象にプロボノを導入する立場にいます。障害者スポーツ団体の方々は、団体とは別の日常業務がありながら、ボランティアで団体の運営をなさっているケースがほとんどです。プロボノプロジェクトで手を借りたいと思っても、プロジェクトに対応できる余力があるか、誰を窓口とするのかなど、リソースへの不安を持たれることが少なくありません。そのため、プロボノ支援自体へのご希望が少ない状況がありました。

 

そこで、通常とは考え方を変えて、各団体をご支援の対象とするのではなく、私たちの協会の日頃は手が届かない課題解決をプロボノにお手伝いいただきたい、協会の課題解決によって生まれる余力で障害者スポーツ団体の方々を後押ししたいと思ってエントリーしました。

 

 

プロジェクトのゴールはどのように設定しましたか?また、プロジェクトはどのように進行しましたか?

 

北場さん:私は、プロジェクトでアカウントディレクターのポジションを担いました。アカウントディレクターは、まずプロジェクトの前に支援先団体から活動の現状や課題についてお話をうかがい、どのような成果物をプロボノチームからご提供するか、スコープ設定を行います。

 

プロジェクトは、「東京都障害者スポーツ協会との協業による、都域障害者スポーツ団体に向けたガバナンスコードの正しい理解促進と、継続したアセスメント体制確立にむけた支援」です。2023年10月から3月までの半年間で取り組みました。

 

ガバナンスコードとは、組織や団体が活動をする際に遵守すべき規範のことです。スポーツの価値を守るためのガバナンスコードは、スポーツ庁によって定められています。組織運営の透明性を向上させるためには、遵守に加えて、団体によるセルフチェックや結果の公表も大切なことです。

 

都域の障害者スポーツ団体の皆さんにも、セルフチェックシート公表が努力義務となっていました。しかしながらプロジェクト実施当時、公表が必要な13団体のうち6団体は、まだ公表にいたっていませんでした。ガバナンスの概念や定義、およびセルフチェックシートの内容の理解が団体の皆さんにとって難しく、日ごろの忙しさも相まってチェックや公表が進まなかったことが要因です。

 

東京都障害者スポーツ協会の皆さんからは、ガバナンスコードの導入と順守、公開において、障害者スポーツ団体をより効果的にサポートする方策がないかと課題感をうかがいました。そこで、プロジェクトを以下4つのフローで実施するよう整理しました。

 

  1. セルフチェックシート記入マニュアル案の作成
  2. セルフチェックシートとマニュアル案を未公開団体に配布して、模擬セルフチェックを依頼
  3. 模擬セルフチェックの改善案をマニュアルに反映
  4. セルフチェックシートの正しい使い方を浸透させるツールの提案

 

プロジェクトでは、東京都障害者スポーツ協会を通じて多くの障害者スポーツ団体の方々にヒアリングにご協力いただきました。メールでのコミュニケーションも組み合わせて、想定していなかったインサイトを収集できました。プロジェクト期間を通して、チームでマニュアルの改善を続け、中間報告と最終報告で東京都障害者スポーツ協会からフィードバックをいただきながら納品へと向かっていきました。

 

また、プロジェクト終了後には、セルフチェックシートの正しい使い方をお伝えするワークショップを東京都障害者スポーツ協会が主催され、スコープを超えてチームメンバーも運営に参加しています。

 

 

プロボノプロジェクトの開始にあたって、不安はありましたか?

 

藤野さん:これまでは、支援を受ける障害者スポーツ団体とプロボノチームのやり取りを見守る立場でした。実際に自分たちが支援を受ける側となったため、プロボノチームとうまくコミュニケーションが取れるのか、打ち合わせはどのような温度感で進むのか、自分ごととして不安な気持ちがわいてきました。

 

しかし、最初のキックオフミーティングは、とても温かい雰囲気でした。プロボノチームの皆さんから、「東京都障害者スポーツ協会は支援を受けるお客さんではなく、一緒に課題を解決していく仲間です。単に立場が違うだけです」と伝えてもらい、一体感ある場を作ってもらったことが印象に残っています。自分もプロボノチームの皆さんと一緒に仲間として意見を出し合い、プロジェクトを進めていけると感じました。

 

キックオフミーティングの様子

 

 

マーケッターの4名の皆さんは、初めてのプロボノプロジェクト参加でした。参加のきっかけは何でしたか?また、参加にあたっての不安はありましたか?

 

原さん:普段は、人材業界で営業職をしています。パラスポーツに関心があり、このプロジェクトに参加したいと思ったことがプロボノ参加のきっかけです。

ガバナンスコードについて聞いたこともなく、自分のスキルをプロボノプロジェクトにどのように接続できるかもわかりませんでした。しかし、やってみたいと思う気持ちが不安に勝って、このプロジェクトに飛び込みました。

 

プロジェクトが始まるまでは、「プロボノはボランティアで自発的に取り組むので、分担や進め方があまり明確にならない」というイメージがありました。しかし始まってみると、北場さんと塚原さんがディレクションしてくれて、自分が役に立てそうなパートや、何ができるのかを一緒に考えてくれました。役割やタスクを自分の中で明確化できたので、プロジェクトに入ってから不安はなく、楽しむ気持ちのほうが大きかったです。

 

有村さん:社会のために自分が何か貢献できないかという気持ちと、スキルアップをしたいと思ったことが参加のきっかけです。自分の仕事の経験やスキルのどこを社会に活かせるのか、プロボノプロジェクトへの参加によって考えたいと思いました。

 

当初、初対面のチームメンバーや東京都障害者スポーツ協会の方々とうまくプロジェクトが進められるのか、初めて聞くガバナンスという内容に自分が対応できるのか、自分のスキルでプロジェクトに貢献できるのか、さまざまな不安がありました。

 

しかし、始まってみるとチーム内の心理的安全性が高く、本業などの関係でプロジェクト中にあまり自分が協力できないタイミングでは、チームメンバーのみんなにタスクを代わってもらう場面がありました。そのぶん自分も何かチームにお返ししたいと思えるようになり、チームメンバーとの関係性の力でプロジェクトを進められたため、不安が払拭されていきました。

自分からもプロジェクトのために色々と動こうと思い、メンバーから教えてもらいながら初めてワークショップの設計を経験できたことで、スキルアップもかなったと思います。

 

田川さん:普段は、製薬会社の営業職をしています。参加のきっかけは、当時の上長とのキャリア面談でした。上長が過去にサービスグラントのプロボノを経験していて、「視野が広がるよ」と勧めてくれて興味を持ちました。

そうは言っても、実際のプロジェクトには飛び込むのが不安だったのが正直なところです。障害者スポーツやガバナンスコードについても知らなかったため、自分が役に立つのか不安はありました。

 

しかし、原さん、有村さんが言うように、北場さんと塚原さんというプロボノ経験者の2人がチームメンバーの強みが活かせるタスクを考えてくれたので、教えてもらいながらプロジェクトを進めることができたと思います。

 

また、プロジェクト期間中に本業で部署異動を経験しました。新しいフィールドに飛び込むことになったのですが、プロボノを経験していたことで、「自分が知らない分野でも周りの人たちが知っていたら大丈夫、キャッチアップできる」という感覚が本業にも生きて、プロジェクトに参加して良かったと感じています。

 

上田さん:普段は、IT分野の企業に勤務しています。一昨年に子供が産まれて、半年間の育休を取得することになりました。育児を中心とした生活を送るうちに、社会とさらにつながり、自分が役立ちたいと思ったことがプロボノ参加のきっかけです。プロボノを言葉としては知っていましたが、これを機に実際に参加してみようとプロジェクトに立候補しました。活動場所が家からアクセスしやすかったことも、プロジェクト選びのポイントでした。

 

プロジェクトは和気藹々と楽しくできて、チームとしての成果が出せたと思います。プロボノチームのメンバーだけではなく、藤野さんをはじめ東京都障害者スポーツ協会の皆さんも含めて、一緒にプロジェクトを動かしている感覚がありました。

プロジェクトが始まる時は、自分がどこまで役に立てるのだろうという不安はありましたが、塚原さんと北場さんが経験者目線のアドバイスを都度送ってくれたことで、不安は解消していきました。

 

最終提案の様子

 

 

プロジェクトで感じた「越境体験」について教えてください。参加によって、プロボノチームのみなさんの仕事や生活にはどのような変化がありましたか?

 

上田さん:属性が異なる、バックグランドや得意なことも違う6人がひとつのプロボノチームとして活動したことは、大きな越境体験でした。

普段は、ある程度お互いの背景が共有されている方々と一つの仕事をしますが、プロボノプロジェクトでは状況が全く違っていました。メンバーそれぞれの良いところを活かしながらプロジェクトを進めることが必要で、塚原さんや北場さんがうまくアレンジしてくれたと思っています。

 

さらに、ガバナンスコードや障害者スポーツという、これまでふれたことのないテーマに携われた経験も大きいと思います。普段の仕事にはないシチュエーションでした。

 

チームメンバーの良いところを引き出し、それぞれの得意なところを担うチームづくりやチームワークは、今後の仕事にも活かせると思いました。それに、プロボノチームのメンバーはみんな優しかったです。全員がお互いの良いところを認めあって、気持ちよくプロボノの活動に関わろうとする姿勢も、勉強になりました。

 

有村さん:私生活と仕事の双方に、プロボノの経験が活きたと思います。

 

自分が住む町のNPO協議会に知り合いがいて、プロボノの活動について共有していました。すると、「市民向けにプロボノの紹介をしたいので、一緒に伝えてくれないか」というお誘いを受け、町のNPOの方やプロボノにこれから参加してみたい方向けに、体験をお話しする経験をさせてもらいました。さらには、別の町で「NPOの課題を整理するワークショップに参加しませんか」と誘いを受け、課題整理に参加する機会もありました。プライベートで知り合う人や自分の学びが広がり、良かったなと思います。このプロジェクトが、私生活の広がりの起点になりました。

 

最近では、仕事で海外出張に出向きました。現地ではバックグランドや言語が違う方々と仕事をするため、自分の考えを伝えようとする姿勢や相手を理解しようとする思いがなければ、お互いのコミュニケーションが成り立ちません。これは、プロボノプロジェクトの状況と同じだと思いました。海外出張自体にチャレンジしようと思ったのも、このプロボノプロジェクトへの挑戦がきっかけです。人生の転換期になったと思います。

 

田川さん:自分自身と障害者スポーツとの関わり方について、気づきがありました。以前は自分の体力に自信がなく、スポーツ分野のボランティアは難しいのではないかという感覚を持っていました。

 

ところが今回のプロジェクトやその後のワークショップでは、さまざまな障害者スポーツ団体の運営を担う方々と直接関わらせていただきました。使命感を持って活動しておられる方々に対して、間接的にでも自分のビジネススキルでお役に立てた実感が得られたのは、本当に嬉しかったです。プロボノプロジェクトに立候補するときには、自分が手伝いたいと思う分野に、自分のスキルでどう関わっていけるかを考えて選ぶのもいいかもしれませんね。

 

プロジェクト完了後も、プロボノチームと東京都障害者スポーツ協会とのご縁が続いています。成果物の活用など、その後の取り組みについてお聞かせください。

 

北場さん:プロジェクト終了後に、セルフチェックシートの記入について障害者スポーツ団体の皆さんにお伝えするワークショップを、東京都障害者スポーツ協会が主催されました。

 

プロボノプロジェクトは、障害者スポーツ団体に向けたワークショップが効果的であると提言し、開催案をご提案するところまでで終了していました。ですから、実際にチームメンバーが参加をコミットしていたわけではありません。しかし藤野さんからプロボノチームに熱いオファーをいただいて、メンバーも全員喜んでワークショップ運営に参加することになりました。

 

障害者スポーツ団体の皆さんから見れば、プロボノワーカーというよそ者が参加する懸念もあったと思います。しかしながら、「障害者スポーツ団体の皆さんが抱える、セルフチェックへの課題を少しでも解消したい」というプロボノチームのマインドが伝わるワークショップになりました。

 

ガバナンスコード・セルフチェックシート作成ワークショップを成功させた、東京都障害者スポーツ協会とプロボノチーム。3回シリーズを表す3本の指を立てている様子

 

原さん:ワークショップから得られた貴重な示唆については公開して、都域に限らず、より多くの障害者スポーツ団体がインクルーシブな知見を得られるといいのではないかと思いました。また、私が障害者スポーツ分野の学会に個人的につながりをつくっていた経緯があり、ワークショップで得られたデータを学会発表に向けて準備中です。

 

塚原さん:学会発表に向けたリサーチクエスチョン作成はプロボノチーム、情報収集は東京都障害者スポーツ協会というコラボレーションで、ワークショップの成果をより広く共有できる流れを一緒につくろうとしているところです。

 

 

藤野さんは、今回のプロボノプロジェクトに関しては見守る立場から支援を受ける立場となりました。支援を受ける側を経験されたことで、プロボノへの見方は変わりましたか?

 

藤野さん:実際にプロジェクトをご一緒してみて、プロボノワーカーの立場にとても理解が深まったと思います。スケジュールをどのように引くのか、ワーカーの皆さんが実際にどのように動くのか、より具体的に見せていただくことができました。

今後、障害者スポーツ団体のプロボノプロジェクトを見守る立場としても、プロジェクトがどのように動いているのか、これまでとは違う目線で見守りができると感じています。

 

 

これからプロボノ参加にご関心のある方に向けて、メッセージをお願いします

 

塚原さん:個人的に、「プロボノは自分の居場所の一つ」と思っています。普段仕事をしているときなどの一面だけが自分の全てではなく、今回のようにチームメンバーから「それぞれの強みを引き出してくれた」と評価してもらった一面も、また自分なのだと思えました。人生100年時代において、プロボノは私たちにとって魅力的な居場所の一つになると思っています。

 

 


 

この記事は2025年3月12日開催のオンラインイベント「大人の社会科見学 online 2025 Vol.1|パラスポーツ×プロボノ 団体&チームの越境体験を話そう|プロジェクトアフタートーク」の内容を編集しています。

 

「大人の社会科見学」は社会課題へのリテラシー向上とプロボノ経験の共有を目的に、サービスグラントでのプロボノ経験を持つ有志メンバーが運営する企画です。

▼プロボノでのプロジェクト参加へご関心をお持ちになった方は、こちらのページも併せてご覧ください。

▼プロボノ参加者向け説明会を随時行っています。以下より日程をご確認ください。

「プロボノ参加者向け説明会」