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小林絹代さん・須藤泰良さん(SAPジャパン株式会社)

「循環する企業プロボノ」SAPジャパン

 

小林 絹代さん / 須藤 泰良さん
プロボノでの役割:プロボノアンバサダー/マーケッター
参加プロジェクト:

NPO法人ワーカーズ・コレクティブちろりん村(2021年)/ NPO法人BASE(2023年)

 

本記事は、2025年6月25日(水)開催の大人の社会科見学 online 「教えて!あなたの会社のプロボノ活動 〜SAPジャパン編〜」のゲストトークの内容をまとめ、お届けします。

SAPジャパンとプロボノ活動 継続の鍵はプロボノアンバサダー

 

小林さん:SAPはドイツ本社の会社で、日本支社の従業員数はグループ会社を含め約2000人です。事業内容はコンピューターソフトウェアの開発・販売などで、「世界をよりよくし、人々の生活を向上させる」が、 SAPの存在意義となっています。

SAPジャパンにおけるプロボノは2021年、サービスグラントさんの仲介によりスタートしました。特徴的なのが、プロボノ活動をするメンバーとは別に「アンバサダー」という役割のメンバーがいることです。2021年に3団体を支援した後、プロボノ経験者が翌2022年、新たな3団体の支援にあたってサポートに入りました。また、2022年のプロボノ活動をしたメンバーがまた事務局としてサポートし、2024年からはプロボノアンバサダーという名称になりました。2025年現在も3団体の支援を行っていますが、現在8名がプロボノアンバサダーとなっています。

SAPジャパンでは、プロボノ活動もアンバサダー活動も、人事、教育担当などとの関わりは全くなく、あくまでも自発的な CSR 活動として継続している所が特徴的です。アンバサダーの職種、性別、年齢も実に多様で、新卒で入った人、中途社員など色々な枠を超えた社員がアンバサダーになることで、異なる視点での会話ができ、関係部署や層が厚くなったことで、プロボノについて、自分ごととして感じてもらえる機会が増えていくのは、とてもいいことだと思います。SAPジャパンでは、 CSRだけでもたくさんの支援活動があり、プロボノについて、このアンバサダー達が活躍し支えています。 また、さらにその体制を支えるように、エグゼクティブスポンサーとしてCFOがプロボノ活動をサポートしています。このお陰で、プロボノにばかり時間を取っていて仕事をしていない人に見られちゃうのではないか・・などと全く思うことなく、すごく自信を持って仕事もプロポノ活動もできます。プロボノ活動することを会社として推奨してくれていますので、やりやすい環境があります。CFOはプロボノの説明会に来てくれたり、成果発表会も全て見てコメントをくれたり、要所要所に来て一緒にプロポノ情報をシェアしている状況です。

プロボノアンバサダーの役割

 

小林さん:アンバサダーは、支援先団体の決定、説明会の開催、社内でのプロジェクト共有会などを担います。 特に重要なのがメンバー集めです。アナウンスメールの作成から説明会資料の作成、説明会開催、その資料や記録をメールで送付したり、社内のデジタルサイネージでのアピールなども、力を入れてやっています。実際にプロジェクトが走り出すとプロボノに参画してるメンバーに伴走するので、一緒に楽しませてもらえますが、準備は毎年力を入れてやらなければと思っています。SAPジャパンは外資系企業で、約2000人という規模です。すごく自由な社風の会社で個人から全社にメールを送れるので、説明会実施連絡を全社に送れますが、情報がたくさん飛び交うことになり、メール配信やサイネージなどでオフィシャルにプロボノの事についてアピールしても、なかなか情報が埋もれてしまいます。ですので、アンバサダーのネットワークでそれぞれのコミュニティへの個別アプローチや、呼びかけをとても大切に考えています。プロボノメンバーの募集メールでは「あなたの力が必要です。プロボノ活動で社会に貢献しよう」とコピーを考えたり、SAPがプロポノ活動をしているということを弊社ホームページなどで外に向けてもアピールしています。地道なこうした活動が、例えば中途社員がウェブサイトでプロボノ活動を見て、社会貢献ができている会社だと判断してもらったり、社員への広報、発信となるよう意識をしています。私は中途社員に関わることが多いので、2022年以降に入社された中途採用の方に、プロボノやCSR 活動について話をして、興味のありそうな社員の方にメールを打ったりしています。

社内にはセールスやコンサルタントが多くいて、営業トークも上手で色々な知識もある人間が多いです。私のようなバックオフィスの人間に、プロボノでできることがあるのかなと、私も参加当初はすごく不安に思っていましたが、実際に飛び込んでみたらできることがありました。外資系でカタカナ英語を使う人も多い中、私は専門用語は使えないので、支援先団体さんと同じ言葉でコミュニケーションをとれる。その存在が意外と支援団体さんに喜んでいただけて、プロボノに参加してびっくりするぐらい自分の視野が広がり、社会貢献できることの喜びをシェアしたいと思うようになりました。自分の経験を共有することは非常に大事だと捉えていて、聞いてくれた人がすぐにはプロボノに取り掛かれないかもしれないけど、いつかやろうと思ってもらえているのではないかと思います。

 

メンバー募集の際に、参加しやすい仕組みであることをアンバサダーから伝えています。すごく時間を取られると思っている人も多いと思いますが、チームで取り組みますし仕事が忙しい時には他の人がやってくれたり手伝ってくれたり、アンバサダーもついています。活動時間の目安として週5時間くらい、3ヶ月がプロボノの支援活動という期限と、経験者が自ら参加に向けて語って、語るだけではなくアンバサダーとしてサポートすることを伝えたら、とても安心してプロボノ活動をやってみようという気持ちになってもらえるようです。

 

プロボノに実際参加したメンバーのアンケートでは、「新しい自分の発見ができた」「世界を確実に広げてくれる大人の社会科見学」「自分の立ち位置を見つめ直す機会」「可能性を広げてくれるチャンスをくれた場所でした」など、新しい発見をしてくれています。その自分の喜びを他の人に話してほしいということもお伝えしています。それが、新しいプロボノの参加者が増えていくことにつながっていくと思います。

 

私も、NPOが社会課題の解決に行政よりも早く取り組まれていることの概念がなくて、勉強不足で知りませんでした。NPOの方々が課題解決に先に取り組んでいて、後から行政がついてくることもあると知ってびっくりし、0から1にしていくことのパワーをNPOの方々からすごく感じました。チロリン村の方々が情熱を持って活動をされている様子をみて、私も情熱的にいきたいなと思わせられました。 仕事をしやすい環境があり、良い仲間に恵まれていますが、仕事を通じて社会貢献ができているという実感はバックオフィスの人間にはあまりなかったのですが、社外のプロボノで貢献できた、期限が決まっている中でもやれたという達成感が自信にもなり、より楽しく生活できるようになりました。

ぜひ、たくさんの方にプロボノプロジェクトに参加していただき、社会課題を実感してプロボノに参加をする前とした後の自分でもびっくりするくらいの変化を楽しんでいただきたいと思っています。

 

初参加のプロジェクト NPO法人BASEさんについて

 

須藤さん:SAPジャパンに入社して7年目になります。昨年初めて参加し、今年も新たな団体さんをご支援させていただきます。1度目のプロボノで関わったBASEさんのプロジェクトの内容と流れを説明したいと思います。チームは8名のメンバーと1名のオブザーバーでした。社歴も所属も様々なメンバーで構成されていて一番若い人はインターン生、所属はコンサルタントから、セールス、プリセールス、バックオフィスの方など構成も様々でした。社内での新たな交流、お互いを知れるという点でいい機会だったと今でも振り返っています。メンバー全員、プロボノ初参加でアンバサダーにお世話になりました。精神障害をお持ちだったり、精神疾患を経験した方の生活上の悩みや日々の活動を通じて出てきた体験をメンバー同士で話りあったり、人に伝えることを演劇を通して行なっていたりします。youtubeチャンネルも公開しています。
プロジェクトに参加しながら精神疾患を抱えている方にはどういう悩みがあるのかを学んでいく中で、人目につきにくく、なかなか理解されにくいために偏見があること。だからこそ、色々な方に知ってもらえるように劇やラップなどの手法で身近に理解しやすいように伝える工夫をしていること。知ってもらえる、分かってもらえることで気持ちが楽になり、日々の生活や人生も変わっていくという大きな良い流れを作りたいと活動をされていることなどを知っていきました。
プロボノ活動に参加する前の生活では触れて来なかった領域ですが、現場に触れる中に「そういうことってあるな」とか、実際に劇を見ると演劇を通すと伝えやすくなる、場面を理解しやすくなることを感じて、「体験してみないとわからないな」と感じたりしました。3ヶ月のプロジェクト期間中、6月にキックオフを行ってから関係者にヒアリングを通じて課題解決を探っていくための糸口を探っていくことし、9月頃の成果物の納品予定の中間地点でミーティングを挟み、成果物のすり合わせなどもしました。日々の業務としてマーケティングなどは経験がなかったのですが、皆さんと悩みながら相談し、ヒアリングを通じて解決の糸口がここではないかという話をしながら、成果物の提案までいくことができました。

活動としては、活動見学会や、BASEさんのイベントへの参加、グッズの販売などを通じて事業所の取り組みを理解すること、ペルソナを設定しその人の課題をどう解決していったらいいのだろうと、デザインシンキングを使って最後に演劇を使って考えることをしたりして最終提案を行いました。

一番大きな問題は新規の利用者が減少していることがあり、これを解消するためのマーケティング基礎調査、BASEさんの活動を知ってもらうための言語化、言語化に向けたヒアリング、他の事業者さんとの比較、デザインシンキング、記事を読むなどをしてアウトプットに繋げていきました。結果的には、短期から中長期にどういうことをしていくと良いか中長期のアクションプランを考えたり、 ハッシュタグの一覧を考えたり、目につきやすい、手に取ってもらいやすいチラシ案を出したり、活動の言語化としてウェブサイトによくあるabout usのテキストをお渡しすることに落ち着きました。


現場活動では実際の事務所を訪れ、グッズ販売なども見学しました。

SAPさんで使われているデザインシンキングのフレームワークでBASEさんについて考えました。

 

初めてのプロボノ活動への参加を通じて、普段の業務では触れらない分野に関わることができ、また、部署が違うメンバーと知り合える機会となったので、その後、仕事を一緒にするときに3ヶ月の共にした経験が生きてくることや、メンバーのひとりにインターン生がおり、入社前から会社のことを知れる機会となったり、ソフトウェア導入の仕事だけでは触れられない新しい気づき、普段生活しているだけでは見落としがちな場面に遭遇して、社会参加の気づきが多く感じられることを実感しました。お店に行った時に、BASEさんと同じB型事業所のチラシについ目がいってしまう変化などがありました。 

仕事へのフィードバックとしては私自身、マーケティング基礎調査は初めての経験になったので、新しいスキルとして身についたなと思いますし、一回だけの参加だけだともっとうまくできたのではないかなと。新しい視点や社会課題に関わる経験をしたいという思いを満たしていくのに、業務をしながらできる経験としてとても良いと思うので、ご関心がある方はぜひ、参加してみて欲しいなと思います。

 

参加のきっかけ、不安とその乗り越え方

 

ボランティアやCSRの活動自体は入社後、興味はあってもなかなか普段の業務が忙しいと、ずっと踏み出せてはいませんでした。アンバサダーの方々が一生懸命出してくれている募集メールなどを見て、3ヶ月という短い期間で経験ができる、できそうかなと応募をした感じです。

初参加で経験がないので大丈夫かなぁという不安はありましたが、プロボノ説明会に参加した際に、以前の参加者の方から初経験でもチームでやり切りましたという声を聞いて、ひとりではない、メンバーがいればなんとかなるかな、という不安と挑戦のどちらもありました。

経験者の声が事前にあることで、それはできるよ、大丈夫だよ、サポートするよというプラスアルファの後押しがあって参加のハードルが下がっている、入りやすいということがあると思います。

 

団体関係者のヒアリングなど、軌道に乗って走り出せるまでに時間を使うところですが、当然、情報を集める、理解するところは時間を使います。また、事業所に足を運ぶなどがまさにプロボノの醍醐味かなと思って、業務の合間を見つけて、ボランティア休暇の制度を上手に使いつつ、なんとかやってみたという感じです。チームメンバーで分業、支え合うことも大事だったと思います。お昼休みに定例会で集まって進めていました。

 

最後に成果発表をした時に、団体さんから「プロボノ活動を通じて団体としての強みを再確認できた。どういう所が第三者からみても評価されるのか確信が得られるいい経験機会になりました、とおっしゃってくださって。成果物を出さなくてはというプレッシャーはありましたが、成果物だけではない良いことが団体さんにもあったんだなぁ、と実感でき、そこはよかったなと思っています。

最終提案後の様子

 

 

※本記事は、2025年6月25日(水)開催の大人の社会科見学 online 「教えて!あなたの会社のプロボノ活動 〜SAPジャパン編〜」のゲストトークの内容をまとめました。

SAPジャパンさんのプロボノの取り組みについてh

▼プロボノでのプロジェクト参加へご関心をお持ちになった方は、こちらのページも併せてご覧ください。

▼プロボノ参加者向け説明会を随時行っています。以下より日程をご確認ください。

「プロボノ参加者向け説明会」