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【2026年春実施報告】青山学院大学 学生達が社会課題の現場で再構築した「届け方」     ——安心して学び、過ごせる場所を、どう発信するか

【前提】

 

認定NPO法人サービスグラントは、これまで社会人の専門スキルを活用した「プロボノ」を推進してきました。そして2024年度からは「いつでも、誰でも、気軽に社会参加ができる未来」を目指し、新しい世代を迎え入れました。その活動が、大学生が自身のスキルと熱意を社会課題解決に捧げる「YOUTHプロボノ」です。

 

学生達が取り組んだ「安心して学べる場所」の発信のかたち

 

2026年度春に「YOUTHプロボノ」に参画した青山学院大学の学生チーム(5名)。今回、学生チームが支援したのは、品川区・渋谷区を拠点に子どもたちへの学習支援・居場所支援を行う「NPO法人マナビファクトリー」です。
マナビファクトリーは、品川区・渋谷区を拠点に、学習支援・食料支援・相談支援・居場所支援という4つの柱で活動するNPOです。経済的な理由で塾に通うことが難しい子どもにも、家庭環境に左右されず安心して学び続けられる場所を——そんな思いのもとで運営されています。世帯収入で都内上位に位置するこのエリアでも、こうした学びの場を必要とする子どもたちは決して少なくありません。
そんな子どもたちが安心して来られる無料の学習スペースを運営してきたマナビファクトリーが抱えていたのが「広報」の課題でした。活動の存在は行政やフードバンクなどの支援機関を通じて届いてはいるものの、Instagram をはじめとする SNS は十分に機能しておらず、利用しようか迷っている家庭へ最後に背中を押す力が弱いままでした。
そこで今回、学生チームの力で、Instagramの運用方針策定から投稿テンプレート・運営マニュアルの作成・アカウント引き継ぎまでを一貫して支援することにチャレンジしました。

「若い視点と想像力を持つ学生」が加わることで、社会課題の現場に新しい風が吹き始めていく——学生チームの活動の様子と、実績から見える教育的・社会的意義をご紹介します。

 

▽プロジェクト紹介ページ
NPO法人 マナビファクトリー
「無料塾の信頼感が伝わるInstagramの構築(学生プロボノ)

https://grant.community/projects/1508

 

【活動内容】現場に飛び込み、「伝え方」の本質を問い直す

学生チームはまず、キックオフミーティングで方向性や具体的なアクションを確認。現場を体験し情報収集をするために、代々木教室・東大井教室の両現場を複数回訪問しました。
実際に活動の様子を目にしながら、学生チームはスタッフへのヒアリングを重ね、支援の現場への理解を深めていきました。
現場見学と並行して、通っている保護者へのアンケートも実施。「入る前に何を知りたかったか」という問いに返ってきた答えは、
「勉強を教えてくれるだけでなく、居場所であるということ」
「どの年代の子が来ているのか」
「開催される曜日や時間帯について」
というものでした。保護者が入会前に求めていたのは、学習内容のスペックではなく、教室の雰囲気や実態に関する情報だったのです。
この気づきを起点に、学生チームはInstagramの位置づけを根本から再定義します。
「Instagramは集客ツールではなく、迷っている家庭の背中を最後に押す場所にする」
主に目指すのは、SNS から完全に新規の利用者を獲得することよりも、行政や支援機関からの紹介を受けて「行くかどうか迷っている」家庭が、Instagramを見ることで「安心して決断できる」——そのような役割設計をチームで導き出しました。

 

【主な活動内容】

• 現場見学・ヒアリング(代々木教室・東大井教室、計3回)
• 保護者アンケートの設計・集計・分析
• Instagramの運用方針・ターゲット設定の策定
• Instagram投稿テンプレートおよびハイライト設計
• Instagram運営マニュアルの作成
• Instagramアカウント引き継ぎ作業

 

 

【成果】現場理解からの「使い続けられる」広報基盤

学生チームは約2ヶ月をかけて、以下の成果物を完成させ、マナビファクトリーへ報告・引き継ぎをしました。
• Instagram運用方針書(ターゲット設定・投稿の役割定義・発信の軸)
• Instagram投稿テンプレート(代々木・東大井それぞれのカラーに対応)
• Instagramハイライト設計(教室概要・スタッフ紹介・Q&A・保護者の声 等)
• Instagram運営マニュアル(ログイン方法 ・投稿手順・ハッシュタグ・イベント告知まで網羅)

 

このマニュアルは、学生ボランティアを含むすべてのスタッフが担当者を問わず更新できるよう、操作手順から言葉遣いの指針まで細かく記載されています。担当者が変わっても「生きているアカウント」であり続けるための、運用基盤そのものです。
特に注目すべきは、発信設計の倫理的な丁寧さです。学生チームは中間報告の段階から、
「支援の発信の仕方によっては、支援される側のネガティブな気持ちが生まれてしまわないか」
という視点を明確に持ち、ハッシュタグひとつひとつを「この言葉がマナビファクトリーに適するか」という基準で選定しました。
「#ひとり親支援」「#貧困」のような言葉を避け、「#無料学習塾」「#居場所づくり」「#進路相談」を使う——その判断は、広報技術以上に、支援現場への深い理解から生まれたものです。

 

 

▽この成果物を受け取ったマナビファクトリーからは、こんな言葉をいただきました。

「正直、学生プロボノさんということで未知数だと思っておりましたが、皆さん誠実に関わってくださり、弊団体の理念についても深く理解を示してくださったことで、こちらの予想を遥かに超えた良いサービスを提供してくださいました。感無量です。」

 

【効果】社会課題の現場が学生の「問い」を育てる

今回のプロジェクトで学生達が向き合ったのは、SNSの運用技術だけではありませんでした。「支援を必要とする人に、傷つけることなく安心感を届けるにはどうするか」という、福祉広報ならではの本質的な問いです。その問いと向き合ったプロセスが、学生一人ひとりに学びをもたらしました。

 

■「失敗していい場所」が引き出した、学生の主体性
学生アンケートでは、回答者全員がプロボノ参加の全体満足度を「非常に満足」と、「今後もプロボノ等の社会活動に参加してみたいか」という問いにも「ぜひ参加したい」と答えました。
数字以上に印象的だったのは、学生からのこの言葉です。
「これまでは失敗しても大丈夫と言われたことがなかったので、『失敗して良い場所』だと言ってもらえたときに心が動きました。」
評価される場では得にくいこともある「安心して挑戦できる環境」が、学生の主体性を解放しました。そしてその安心感は、マナビファクトリーが子どもたちに届けようとしている価値そのものでもありました。
また、社会人プロボノワーカー・支援先双方からのフィードバックで、学生達に以下のような力があることも明確になりました。
 ・調査や分析を丁寧に進め、責任を持って資料を仕上げる姿勢
 ・アイデアを実行に移す主体性
 ・チームで議論を深め、意思決定を支える協働力
 ・資料作成・司会進行など、場をまとめるコミュニケーション力
こうした力は、学生達が参加前から持っていたものも多いはずです。しかし現場での実践とフィードバックを経ることで、学生自身が「自分の強み」として認識できるようになりました。
「大学入学後、自分の強みを実感できる機会が減っているように感じていましたが、今回の活動を通して強みを再認識できました。特に資料作成力や司会進行力を褒めていただく機会が多く、客観的な立場から評価していただけて嬉しかったです。」
こんな喜びを語る学生の声にも表れています。

■「誰かのために使う」ことで、知識が初めて力になった
ターゲット設定、情報設計、言葉の選び方——マーケティングやメディア表現として授業で学べるこれらの知識を、学生達は今回「支援を必要とする家庭の心理的ハードルをどう下げるか」という実際の課題に対して使いました。教室の知識が「誰かのための力」へと変換される瞬間が、このプロジェクトの随所にありました。
特筆すべきは、ハッシュタグひとつの選定にも「この言葉が支援される側を傷つけないか」という視点を持ち込んだことです。広報の技術を「誰かを守るための手段」として使う経験は、教室の授業では得にくいものです。
学生への「このプロボノ経験はキャリアにプラスになると思うか」という問いに、回答者全員が肯定的に回答し、その理由として
「自分が携わったことが実際に社会に還元されるという経験ができたから。」
という声もありました。
■「社会との関わり方」の選択肢が広がった
プロジェクトを経て、学生達のキャリア観にも具体的な変化がありました。
「漠然と子ども支援に関わりたいと考えていましたが、就職して企業で行うのか、NPO法人でボランティアを行うのかなど、関わり方は様々あることが分かり、子ども支援と就職活動を必ずしも結びつける必要はないと気付けました。」
「チームで協働することの楽しさや充実感を認識でき、個人ではなくチームとして働ける職を志すようになりました。またマナビファクトリーのように、利益だけを追求するのではなく、社会貢献や福祉に携わる職にもより一層興味を抱きました。」
社会課題の現場に触れることで、「社会との関わり方」の解像度が上がる——これがYOUTHプロボノの、キャリア教育としての本質的な価値です。
■団体の運営基盤と、地域への波及

今回の活動を通じ、マナビファクトリーは今後の安定したInstagram運用のための基盤を得ることができました。担当者が変わっても継続できるマニュアル、統一感のあるテンプレート、そして「迷っている家庭の後押しになる」という明確な発信の軸。この基盤があることで、団体スタッフは「何を、なぜ発信するのか」を迷わず更新できるようになります。
団体側が学生チームに感じた価値は、技術面だけではありませんでした。SNSに親和性の高い学生ならではの新鮮な視点、既存の枠にとらわれない発想、そして理念を深く理解した上での提案——これらが組み合わさることで、団体が単独では生み出せなかった広報の基盤が生まれました。

 

▽マナビファクトリーからは、次のようなコメントをいただきました。

「ご自身の経験のために取り組んでいるというだけでなく、お一人お一人が、弊団体の理念について考え、理解を深めてくださり、誠実に携わってくださいました。素晴らしい成果物をいただきましたので、しっかりと活かしていきたいと思います。」

学生の専門性が地域の社会課題に直接貢献する。この循環こそが、YOUTHプロボノが目指すものです。

▽伴走した社会人プロボノワーカーは、次のように振り返ります。

「団体さんには3回の現場見学を受け入れていただき、全員が見学できました。雰囲気が良く、居場所がある大切さや子どものペースで見守る姿勢を体感できたことも、学生達からのいい提案につながりました。学習支援だけでなく貧困の背景にある複合的な課題、親御さんへの配慮、地域活動の信頼関係も垣間見えて、こういう一つ一つの活動が社会を支えていると感じられる素敵な団体さんでした。」

 

未来への展望 〜「伝える」ことが、つながりを生む〜

 

今回、学生チームが作り上げたマナビファクトリーのInstagram運用基盤は、主な目的を「認知拡大」や「集客」ではなく「安心の可視化」としています。例えば、行政や支援機関から紹介された保護者が、その夜にInstagramを開き、「ここなら行かせてみよう」と思える。その小さな後押しが、一人の子どもの学びと居場所につながっていく——
このプロジェクトは、学生が大学で培った知識を現場で試し、それが「社会で通用する力」へと変わるプロセスを実感する最高のチャンスとなりました。同時に団体側も、学生の新鮮な視点と誠実な姿勢を得て、活動をさらに強くする貴重な機会となりました。
私たちサービスグラントは、学生のスキルと情熱が社会を動かす力になると確信しています。
今後も、このような成功体験をモデルにYOUTHプロボノを各大学へと広げ、学生一人ひとりが自身の可能性を社会の最前線で試せる場を提供し続けます。
今後もプログラム展開を予定し、大学の皆さま、そして地域団体の皆さまとの新しい出会いを心待ちにしています。ぜひ、未来に向けたこの協働にご参加ください。

 

過去の取り組み実績はこちら

 

【問い合わせ先】

 認定NPO法人 サービスグラント
 (YOUTHプロボノ事業)
 TEL 03-6419-4021
 info@servicegrant.or.jp

 

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