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【レポート】プロボノを通じた関係人口の創出事例
~長崎県「ながさきプロボノチャレンジ」

担い手不足の時代に、“関わりしろ”をデザインする

 

~プロボノによる市民参加の可能性~

 

暮らす場所は一つでも、関わる地域は複数あっていい。

人口減少が進む自治体において、地域外から多様な形で関わる「関係人口」の創出は、大きなテーマとなっています。

サービスグラントでは、職業上の経験やスキルを活かすボランティア「プロボノ」を通して、社会課題解決に取り組むNPOや地域団体の運営基盤強化を支援しています。プロボノは団体の課題解決にとどまらず、地域の外にいる多様な人材と地域をつなぐ、新たな関係人口創出の手段としても注目されています。

 

本セミナーでは、2023年5月にサービスグラントと連携協定を締結し、「ながさきプロボノチャレンジ推進事業」に3年間取り組んでこられた長崎県庁の森さんをゲストにお迎えし、事業の立ち上げの経緯と実績、そこから見えてきた関係人口創出の可能性について伺いました。

その内容をレポートとしてお届けします。

 

目次

ながさきプロボノチャレンジ推進事業とは

プロボノ導入のきっかけ

団体選定からプロジェクト実施までの進め方

事例紹介:NPO法人環境保全教育研究所(へんちくりん)/腸活ひろば

3年間の総括と、プロボノ導入における注意点

プロボノと関係人口創出の可能性

質疑応答

 

登壇者:森 琢也 さん 長崎県 県民生活環境部 県民生活環境課

 

長崎県 森琢也氏県民の暮らしの安全・安心と環境保全を総合的に担う「県民生活環境部」にて、プロボノによるNPO支援を担当。サービスグラントと「ながさきプロボノチャレンジ推進事業」に関する連携協定を締結し、ながさき県民ボランティア活動支援センターへのノウハウ移管を目指して事業を推進している。現在は、プロボノを関係人口づくりなど幅広い分野で活用できる仕組みとして展開している。

 

ながさきプロボノチャレンジ推進事業とは

サービスグラントと長崎県は、2023年5月に連携協定を締結し、「ながさきプロボノチャレンジ推進事業」をスタートしました。県内で活動するNPO法人やボランティア団体が抱える運営上の課題に対して、民間企業等に努める社会人の「プロボノワーカー」が経験や知識を活用して共に解決に取り組み、団体の運営基盤強化を目指す取り組みです。サービスグラントが運営するマッチングプラットフォーム「GRANT」には、この事業の特設ページ(https://grant.community/nagasaki)が設けられ、3年間で完了したプロジェクト数は12件となりました。

 

 

プロボノ導入のきっかけ

 

――長崎県として、プロボノを導入したきっかけを教えてください。もともとどのような行政としての課題感があり、プロボノの活用をどう考えていたのでしょうか。

 

森さん:県民生活環境課は基本的にNPOやボランティア団体の活動支援を行っており、団体の課題を解決して運営基盤強化や活動活性化につなげることも、当課のミッションの一つです。団体の課題としてよく挙がるのが「人と金」。メンバーの高齢化、後継者不足、資金不足に加え、経理処理の方法がわかりづらい、広報のノウハウが不足している、といった運営面の課題もあります。行政職員や県民ボランティア活動支援センターの職員も一定の知識は持っていますが、それよりもプロボノの仕組みを活用して専門的なスキルを持った方(プロボノワーカー)に活躍していただく方が、地域や団体にとって有効な手段になり得ると考えました。

また、単に一つの課題をプロボノワーカーが解決するのではなく、プロボノワーカーさんに団体の伴走支援をしていただき、団体自身がその解決プロセスをノウハウとして獲得していくことで、持続的な成長にもつながると考えました。さらに、県内の企業人材がNPO等に関わっていただく切っ掛けを作ることができれば、人材面の課題解決にもつながる可能性があると考え、事業化に至りました。他の自治体で先行した取り組みの事例があったことも後押しになりました。

 

――導入前には青森県や鳥取県などにもヒアリングされたそうですね。「人と金」のうち、金については補助金や助成金の仕組みがある自治体も多いと思いますが、担い手をどう探すか、あるいは長崎県出身で地元に貢献したいという思いを持つ地域外の方とつながる機会についても、可能性を感じていたのでしょうか。

 

森さん:地域外の方がプロボノワーカーとして地域に関わることを「ふるさとプロボノ」と言ったりしますが、出身の方はもちろん、ゆかりのある方にも関わっていただければとも感じていました。

 

団体選定からプロジェクト実施までの進め方

 

――連携協定を結んだ直後、実際に困りごとを抱えている団体に声をかけていく必要があったと思います。団体の探し方等について教えてください。

 

森さん:ながさきプロボノチャレンジでは、団体を公募しました。課題解決にプロボノという仕組みを使ってみませんかということで周知し、参加希望の団体に申請書を提出していただき、支援先団体を決定するという流れです。周知にあたっては、市の社会福祉協議会などに案内を送りつつ、複数の地域で説明会を行いました。説明会はサービスグラントとともに実施しました。また、県や市、コーディネーターとなる県民ボランティア活動支援センター(以下、県ボラセン)から直接お声掛けをした団体からの申請もありました。

 

支援先団体が決定した後は、マッチングプラットフォーム「GRANT」にプロジェクトを掲載していきます。団体自身に掲載文章案を書いてもらったり、文章化が難しい団体には、県ボラセンのスタッフや県も交えて三者でオンラインミーティングを行い、聞き取った内容を掲載案として下書きすることもありました。プロジェクトを掲載しても、プロボノワーカーさんからなかなかエントリーがない場合もあります。そうした時には掲載案の内容を見直したり、サービスグラントに相談したりしながら進めていきました。

 

ながさきプロボノチャレンジ推進事業には、①支援を受ける地域団体、②参加希望者(プロボノワーカー)、③コーディネーターとなる県民ボラセンという3者に加え、④全体としてサポート立場として、我々とサービスグラントが関わっています。今回の事業のもう一つの大きな目的は、地元の中間支援組織である県ボラセンが、自らプロボノのコーディネートができるようになることでした。

 

 

事例紹介

 

――具体的な事例を2つ、教えてください。

 

森さん:1つ目はNPO法人環境保全教育研究所、通称「へんちくりん」です。竹林の整備や環境保全をメインに行っている法人で、2つの課題があったため、2つのプロジェクトを掲載しました。1つ目は団体内での情報共有の方法についてです。LINEやメール等様々な情報交換の手段があり、統一できていなかったのですが、プロボノワーカーさんからこの団体に合ったツールとしてMicrosoft Teamsを提案していただきました。

2つ目は業務の標準的なワークシート例の作成です。イベント運営の手順書が属人的になっていたため、統一した方法を作成したいというプロジェクトです。エクセルを用いた作業整理ファイルを納品していただき、今もボランティアの方々が活用してイベントを運営しています。

この法人はその後もプロボノの仕組みを大いに活用しています。プロジェクトに参加された神奈川県のプロボノワーカーさんが翌年「へんちくりんさん」を訪れてくださったり、四国からたけのこ掘りのイベントにわざわざ駆けつけてくださったりと、プロジェクト終了後も交流が広がっています。

 

2つ目は「腸活ひろば」さんです。腸を健康にすることで体を健康にしていこうという活動をしている任意団体です。設立したばかりで広報がインスタグラムのみだったため、どのような形で広報活動を行い、どういったツールで発信していけばよいかアドバイスをいただきたいというプロジェクトでした。支援をしてくださったプロボノワーカーさんは佐賀県の方で、Web上のサービス「note」を軸に他のSNSでも発信していく提案をいただきました。プロジェクト終了後も気軽に相談してくださいと言ってくださっていて、その後も交流が期待できる状況です。

 

事例

 

3年間の総括

 

――3年間で12プロジェクトを行った総評はいかがですか。

 

森さん:支援団体さん、ワーカーさんも含めて満足度はかなり高く、好評をいただきました。ただ、長崎ということもあってか、「プロボノ」という言葉の認知度がまだあまり高くなく、周知の工夫が必要だった印象がありました。これが浸透していけば様々な場面にプロボノの仕組みの可能性が広がってくると思いますので、県としても引き続き取り組んでいきたいですし、コーディネーターとして得たノウハウも活用しながら支援を進めていければと思っています。

プロジェクト完結までの一連の流れの中では、プロジェクト掲載の文章の落とし込みがかなり肝になるという印象がありました。団体さんは思いが強い分、思いが先行した文章になりがちですが、プロボノワーカーさんはその文章だけを見てエントリーするかどうかを判断するため、プロボノワーカーの目線で「支援したい」と思えるような文章にする必要があり、そこは心がけて団体さんとともに確認をしました。

 

プロボノ導入における注意点

 

――団体が、その実体験を周りの団体にお披露目する会を開いてくださった事例も印象的でした。体験を伝える循環から、プロボノの認知も広がっていくことに期待したいと感じています。そのほか、プロボノを導入するにあたってのポイントなどはありますか?

 

森さん:例えば団体がホームページに課題があると感じている場合、実際にボランティア活動であるプロボノとしてホームページのすべてを作成していただくには、負荷が高すぎます。そこで、ある団体では、サイトマップの作成までをプロボノワーカーさんにお願いし、実際の作成部分は費用を用意し、団体さんから業者さんに発注して進めるという流れになったこともありました。プロボノワーカーさんのご意向にもよりますが、どこまで依頼できるのか、という部分については、意識しておく必要があると思いました。

 

――15の登録団体に対して12プロジェクトの実施ということで、実際にプロジェクトの実施がなかった団体もあったと思います。どのように対応されたのでしょうか

森さん:登録団体は、基本的に公募をかけて申請いただき、決定した団体に登録していただく流れを作っていました。ただ、対象以外の団体が、何らかの情報を得て自らGRANTに登録したケースがありました。そちらは県の事業とは別の流れになることもあって、まだプロジェクト掲載まで至っていない状況です。そうした団体も課題を抱えているとは思いますので、県ボラセンにつないで解決に向けていただくなど、橋渡しはしています。

 

プロボノと関係人口創出の可能性

 

――12件のプロジェクトのうち、9〜10件ほどは長崎県外在住のプロボノワーカーさんによる支援でした。県内の人材の活用も期待する一方で、県外からの応援機会にも恵まれましたが、プロボノと関係人口の可能性についてはどう思われますか。

 

森さん:県出身者の方に興味を持っていただける可能性は高いと感じます。友人が長崎県出身で遊びに行ったことがあるという方がプロボノワーカーとして入ってくださった例もあり、様々なつながり方があると思います。今後も県外県内の方の目線を地域に入れることは大事な要素だと思いますので、関係人口創出にも寄与できるような展開の仕方を考えながら進めていければと思います。

 

 


 

森さん、貴重なお話をありがとうございました。ながさきプロボノチャレンジ推進事業の3年間の歩みからは、プロボノが団体の課題解決にとどまらず、地域外の多様な人材と地域とをつなぐ「関係人口創出」の手段としても機能しうることが見えてきました。

サービスグラントでは、こうした行政・中間支援機関との協働を通じて、プロボノの可能性を今後も広げてまいります。

 

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