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[1000件達成記念]企業CSRのキーパーソンが語る、企業プロボノ導入の実感

サービスグラントでは、企業によるプロボノプログラムの立ち上げ、運営、そして、より良いプログラムに向けた、社員・団体双方のアセスメントまでをサポートしています。今回は、ともに日本を代表する企業でCSR活動などを推進する3名の方に、企業経営の中でのプロボノの位置づけや重要度が高まるSDGsへの取り組みとの関係性、プロボノ導入から得られた気づきなどをお話しいただきながら、今後の社会の中でプロボノが果たす役割や可能性を展望しました。

 

 

[ゲスト]
東郷 琴子さん(パナソニック株式会社 CSR・社会文化部 主幹)
増田 典生さん(株式会社日立製作所 グローバル渉外統括本部 主管)
江草 未由紀さん(住友商事株式会社 サステナビリティ推進部 社会貢献チーム長 100SEEDプログラムリーダー)

[聞き手]
嵯峨 生馬(認定NPO法人サービスグラント 代表理事 )

 


 

「3ヶ月という短いプロジェクトでも、参加者の大きな成長を感じます。特に、普段の仕事では得られない体験をして、若手社員の顔つきが変わりました」、こう笑顔で語ってくださったのは、住友商事で社会貢献活動を担当する江草さん(写真中左)。2020年度にプロボノプログラムを導入したばかりですが、1期目のプロジェクトを終え、大きな手応えがあったそうです。

 

「うちも、同じです」と頷くのは日立製作所の増田さん(写真右)。「特に大規模なシステムに従事しているエンジニアやバックヤードのシステム開発の部隊には、直接お客様に対面する機会が少ないメンバーもいます。そうした彼らが、プロボノで小規模のNPOを支援して『ありがとうございました、助かりました』と言われると、自分のスキルが社会貢献につながることが実感できるようです」と、社員の方たちの充実感を伝えてくださいました。

 

パナソニックの東郷さん(写真中右)は「プロボノプログラムには、ボランティア活動に参加するのが初めてという人たちが多く手を挙げてくれて、企業市民活動の参加者の裾野が広がりました」と、別の切り口での効果を語ってくださいました。

 

3社はともに黎明期から社会の発展を支える企業としての自負があり、社会貢献にも力を入れてきた歴史があります。そのような土壌の上にプロボノを導入するのには、どんな意味があったのでしょうか?
質問が飛び交い活気ある情報交換となった3社とのパネルトークを、以下にダイジェストでご紹介します。

 

(※以下敬称略)

プロボノ導入の経緯と位置づけ

 

嵯峨:まずはプロボノ導入の経緯をお話しいただけますでしょうか?

 


東郷:パナソニックは今年で103年目を迎える会社です。松下幸之助創業者は、今から90年ほど前に「産業人タルノ本分ニ徹シ 社会生活ノ改善ト向上ヲ図リ 世界文化ノ進展ニ寄与センコトヲ期ス」という綱領を制定しています。この事業を通じて人々の暮らしの向上と社会の発展に貢献していくという経営理念に沿って、あらゆる事業活動を展開しています。
基本は事業を通じてということなのですが、事業活動とともに企業市民活動においても社会課題の解決に取り組んでおり、特に事業活動が届きづらく課題がより深刻な新興国・途上国に向けて企業市民活動を展開しています。

 


東郷:企業市民活動の中で重点テーマに掲げているのが、グローバルに社会課題として認知されているSDGsの重要なゴールである「貧困の解消」です。松下幸之助創業者も「生産者の使命は、この社会から貧困をなくしてくことではないか」と述べており、「共生社会の実現に向けた貧困の解消」を目指して「人材育成」「機会創出」「相互理解」の3つの切り口で課題解決に向け取り組んでいます。
プロボノプログラムなどのNPO/NGO支援の取り組みは、「機会創出」のためのプログラムと位置づけています。そして、当社のNPO/NGO支援の取り組みには「組織基盤強化を支援する」という特徴があり、プロボノプログラムでも事業計画立案やマーケティング調査、業務フローの改善提案、情報発信などをサポートしています。

 


嵯峨:パナソニックさんは、我々サービスグラントと共に2011年よりプロボノプログラムを実施してきましたが、今年で10年となりました。日立製作所さんとも、今年で5年になりますね。

 


増田:私自身のプロボノおよびサービスグラントさんとの出会いは、以前にグループ会社でCSR部長をしていたときにさかのぼります。そこでプロボノを展開したいとご相談してからのお付き合いで、日立製作所に転籍をしてからも引き続きご支援いただいています。
日立も110年ほどの歴史がありまして、2017年には「サステナビリティ戦略の方針」を立て、「事業を通じて社会が直面する課題に率先して応え、SDGsの達成に貢献する」ことを宣言しました。私は当時、サステナビリティ担当部長でしたが、会長の中西(宏明氏)から指示を受けて私が所属する本部でこのサステナビリティ戦略を構築しました。
2017年というとSDGsができてまだ2年ですが、中西はこれを非常に重視していました。そもそも中西は、社長時代に「社会イノベーション事業」というコンセプトを体系化しており、これがまさに持続可能な社会の実現を目指すものなんですね。彼の頭の中では、SDGsの実現と事業活動のめざすゴールがイコールで結ばれているんだと思います。
我々は事業を通じてSDGsを実現しようとしています。私は、日立はBtoBの会社ではなくBtoSの会社だと思っています。BtoBtoCtoS、つまり直接の顧客のニーズを満たすだけでなく、その先のお客様を通して社会に価値が提供されるものであるべきだという考えです。
価値の最終提供先である社会にどういうバリューを出すのかというときに、まずはその社会にある課題を見る必要があります。そのための非常に良い機会が、プロボノです。

 

 

また、我々は各種CSR活動を、コンプライアンスなど「できて当然」の守りの施策と、積極的にバリューを生みしていく攻めの施策に分類しています。その中でプロボノは、対外的に会社のブランドや価値を高める効果があり、攻めのCSRの一番良い例だと考えています。

 

 

 

嵯峨:ありがとうございます。では、住友商事の江草さん、お願いします。

 


江草:住友商事には、そのルーツとなる住友400年の歴史があり、その事業精神の一つに「自利利他公私一如」があります。これは「住友の事業は、住友を利するとともに、国家や社会をも利する事業でなければならない」という意味で、我々のサステナビリティ経営の原点です。ですから、従来から様々な社会課題の解決に取り組んできたのですが、社外からはそれが分かりづらいという課題がありました。そこで2015年のSDGs採択をきっかけに、これを言語化し、より明確に発信していく取り組みが始まりました。
その第一歩が、当社の事業がどのように社会に貢献しているのかを整理して纏めた「社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)」(2017年策定)です。
さらに2020年には、社会のあるべき姿からバックキャストし、社会課題の解決に、より積極的にコミットする「サステナビリティ経営の高度化」に着手。当社グループが優先的に取り組むべき6つの重要社会課題を定め、それぞれに対する長期目標を設定しました。
現在、これらの長期目標達成に向けて、具体的な中期目標や達成状況を評価するKPI/KAIをまとめているところです。これらには、主に事業を通じて取り組みますが、「良質な教育」には、社会貢献活動を中心に取り組んでいきます。

 


また、2019年の創立100周年を機に、アクションプランのひとつとして上がったのが、100年先の社会を考え、全世界で取り組む社会貢献活動プログラム「100SEED」です。世界各地の社員による投票や議論の結果、SDGsの目標4「良質な教育」が共通テーマとして選ばれました。その国内活動の一つとして、2020年より、教育課題に取り組むNPOに対して運営基盤の強化をサポートする「教育支援プロボノ」を始めています。

 

 

嵯峨:江草さん、ありがとうございました。3社とも企業としての社会貢献としてプロボノを取り入れていらっしゃりますが、それぞれにプロボノの実施内容や期間などが少しずつ異なっています。これらについて、実施の概要や期待されている成果などを教えていただけますでしょうか?

 

 

三社三様のプロボノの内容とねらい

 

東郷:パナソニックでは、1990年代から市民活動団体と協働して企業市民活動を推進しており、1998年のNPO法設立の際には、社員やOB等が継続的に関わるNPOを支援するプログラムを開始するなど、会社として早くからNPO/NGOと接点がありました。

そのような中で、NPO/NGOの組織基盤を強化しないと市民活動の持続発展が危ういのではないかという問題意識のもとに、2001年に「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs(旧:Panasonic NPOサポート ファンド)」という、NPO/NGOの事業活動への助成ではなく、組織基盤強化に助成するプログラムを設立しています。
プロボノプログラムの開始にあたっては、このファンドの助成先へのフォローアップと社員との接点を強くしたいという思いがありました。加えて、社員のスキルや経験を支援先の事業展開力強化に役立てることで社会課題の解決を促進するとともに、社員のイノベーションマインドの向上にも期待して、このプログラムを立ち上げました。
基本的には約半年ほどの期間をかけて支援先の事業展開力の強化を応援していますが、東日本大震災での復興支援プロボノは1泊2日で実施するなど、毎年約30人が5団体ほどを支援するという形で10年継続していて、延べ300人近い社員がプロボノに参加しました。また最初の5年ほどはサービスグラントさんと一緒に、プロボノの意義や価値を社会に広めていこうと「プロボノフォーラム」も開催してきました。

 

増田:日立製作所では、社員が気軽に参加できる短期(約2ヶ月)のプロボノプログラムを提供しています。また、東北へのプロボノとして岩手県釜石市や宮城県女川町の震災復興・地域活性支援活動を行っており、継続的に複数のプロジェクトが展開され、長期的な関わりも生まれています。
会社の経営を長期的に考えるとき、自社の商品や市場という既存のリソースにとらわれず、社会課題を起点に事業のあり方を考えていく必要があります。プロボノは、そのためのフィールドワークになるはずだと考えています。

 

江草:我々はプロボノで教育課題に取り組むNPOを支援していますが、教育はあらゆる社会課題解決の基盤づくりにつながるものであり、この活動は社会に貢献するだけでなく、我々自身の成長にもつながるものだと認識しています。2020年に活動を開始したばかりですが、3ヶ月間のプロボノで6つの団体を支援、また3時間のスタディツアーを2つの団体と実施しました。参加した社員は、計71人にのぼっています。

 

嵯峨:みなさん、実際にプロボノを取り入れてみて分かった効果としてはいかがでしょうか?

 

東郷:私たちは早くからプロボノを取り入れてきましたが、今でも「新しい形のボランティア活動」としてメディアからの注目度も高いです。また、パナソニックではプロボノの取り組みで「東京都共助社会づくりを進めるための社会貢献大賞」の特別賞をいただくなど、社会からの期待も高まっていることを感じます。さらに「人生100年時代」や「働き方改革」などの昨今の時流からみても、プロボノはより意義が高まってくるのではないでしょうか。昨年、経験者に実施したアンケートからは、NPO/NGOとの協働の経験が社会課題や多様性を体感でき、本業においても良い変化が生まれているとありました。

 

江草:プロボノに参加した社員を見ていると、社会課題に最前線で取り組んでいるNPOの方々と接することで、大いに刺激を受けるようですね。またフラットなチーム運営で、普段とは異なる役割を持つことによる成長も大きいようです。課題を分析し、ゴール設定をするところからメンバーで話し合い、その中で自発的に役割を見つけて成果を出すという経験は、本業にもとても役立つものだと思います。

 

増田:プロボノが直接的なビジネスチャンスにつながることもあります。例えば、日立が提供する公共インフラの新たなビジネスチャンスは地方創生にあると言われているものの、まだニーズが明確でないところに事業部門として予算を付けるのは難しいという状況があります。ですが、我々はすでに東北の復興支援を行っているので、コーポレートの予算で東北に出張して関係者のお話を聞いてくることはできるわけです。ほかに、学校教育支援のプロボノで小学校と中学校の情報の利活用の支援もしていまして、この講師には学校対応の営業の人間が多く手を挙げてくれます。営業として訪問しても門前払いされる学校も、「講師で来ました」と言えば入れてもらえて、先生方と名刺交換もできます。このようにプロボノを自分の仕事に活かすということも、我々としては推奨しています。

 

今後の展望

 

嵯峨:最後に、今後の目標や展望をお伺いしたいと思います。プロボノ活動の広域への展開や複数企業との共同プロジェクトの可能性なども、もしあればお話いただければと思います。

 

増田:グローバルの展開は、ぜひやってみたいですね。私たちもサステナビリティ・グローバル・ミーティングというものを年に一度開催しておりまして、国外のサステナビリティの担当者とコミュニケーションをしています。やはり地域によって社会課題や求められるボランティア活動というものが異なり、今はそれぞれのやり方で熱心に社会貢献活動を行っています。それを”One HITACHI”という形でまとめていく上で、外部の機関のサポートもあればありがたいです。
また、他社との混成チームについては過去にやったことがありまして。宮城県女川町での支援活動をSCSKさんと行い、これが非常にうまくいきました。最終的には会社の枠を超え、仲間として協働ができました。互いのケミストリーや志が合う会社さんであれば、刺激を与え合う良い関係ができると思いますので、大いにやっていきたいです。
今後に関しては、企業が何のために存在しているのか、そこに立ち返ることが大事だと考えています。非財務価値、そして社会における価値が問われる時代になっており、それに応えることが結果として企業の持続可能な成長を可能にするのだと思います。
社会の中で企業が何をできるのかを考える際、社会の問題をダイレクトに見ることができるプロボノは本当に重要です。このようなことを社内で伝え、活動を広げていくということを、今後も続けていきたいです。

 

東郷:今後の展望については、10年活動してきましたが、社員がみんなプロボノという言葉を知っているかというとまだまだで、引き続き社内での認知を広げていかなければなりません。これまではプロボノへの参加は関東と関西の社員が中心だったのですが、昨年度はコロナがあってオンラインでのプロボノを前提に呼びかけたところ、全国の社員から手が挙がるようになりました。一方で、“スキルを活かした”という枕詞のつくプロボノに少々敷居の高さを感じる社員もいるようなので、今後は『社会のお役に立ちたちという気持ちと、パナソニックで働いた経験があれば誰でもプロボノができる』という形で、もっとプロボノ人口の裾野を広げていきたいと思います。そしてプロボノ経験者がプログラムの運営を行えるようになれば、さらに輪が広がるのではないかと思っています。
グローバルや他社との混成でのプロボノに関しては、以前からも検討していました。2022年には当社は持株会社制へと移行し、会社の体制や社員の意識も大きく変わってくると思いますので、そのような機会を捉えて新しいことにも挑戦していきたいです。

 

江草:我々はまだ始めたばかりなので、まずは国内のプロボノ活動を浸透させていくことだと考えています。次の課題は、グループ内への展開でしょうか。強制するものではないので、「我々はこんな事を考えています。ぜひ一緒にやりましょう」と呼びかけ、賛同くださる会社と一緒に取り組んでいきたいです。他社さんとのコラボも面白そうですね。研修で、異業種の会社さんと一緒にやったワークショップがとても盛り上がりましたから、とても良いアイデアだと思います。ゆくゆくはご一緒させていただければありがたいです。
また、100SEEDの活動全体では、グローバルを視野に入れて動き始めています。コロナで停滞している地域もありますので、2021年度は各国の動きを共有することに力を入れたいと思っています。地方拠点の担当者は、本業の傍らプログラム運営をしています。そうすると負担が大きく難しい面もあるようなので、本社で何らかのしくみを提供することができればいいなとも考えています。

 

嵯峨:まだまだお話はつきないところですが、今後の活動にも、このつながりを生かしていただければと思います。今日は貴重なお話をありがとうございました。

 

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