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イベントサマリーレポート
越境による経験学習(FAIL FIRST)のススメ
ー組織の見えない鎖を解く鍵は、恐れを乗り越える機会ー

変化が激しく不確実性の高い時代、状況に適応した課題解決力を発揮できる自律型人材への需要が高まるとともに、その育成機会としての“越境学習”に注目が集まっています。
一方で、固定化された組織の役割や枠組みから飛び出すことへの『恐れ』や、事業を推進する上で『失敗』を許容されない空気感が社員一人一人の挑戦への意欲も低下させているといわれています。

 

越境学習は、社員のキャリアアップにつながり、自律性の向上に役に立つだけでなく、企業で働く社員のモチベーションの維持・向上にも役立つなどの効果も指摘される流れの中、当イベントでは、「越境学習とプロボノ」についてフォーカスし、アカデミックと企業人事の現場の二つの視点から講演を行いました。後半は、人材育成のプロによるファシリテーションのもと、さまざまな立場の方々に集まっていただき議論を交わすパネルディスカッションと、参加者からの質問にお答えしました。

 

イベント当日は、人材育成として、また越境学習の場としてプロボノの導入に関心をお持ちの企業の人事・人材育成、社会貢献の担当者や、社会セクターへの越境によって起こる人の変化を知りたい方など、多くの方が参加され、満足度の高いイベントとなりました。

講演レポートと、パネルディスカッションの中でイベント参加者からいただいた、企業の皆さんにとって関心の高い、越境学習の企業への展開や評価等の質問と回答をまとめました。

ぜひご覧ください。

 

キーワード:
#越境学習 #越境体験  #エンゲージメント #人材育成  #企業  #プロボノ #社会課題
#アンラーニング  #リフレクション  #ジョブクラフティング  #EQ(感情指数)

 

※当レポートは、2022年4月20日に開催されたオンラインセミナー「越境による経験学習(Fail First)のススメ」で発表された内容に基づくものです。

 

目次

Session1 講演①
企業にとっての越境学習の必要性とそのポイント
 
   法政大学大学院政策創造研究科教授 
   石山 恒貴(いしやま のぶたか)氏
Session1 講演②
Twitter Pro bono Project 2021 その狙いと考察

   Twitter Japan株式会社 リージョナル・ラーニング・リード
   中村 佳央(なかむら よしお)氏
Session2 パネルディスカッション
   石山 恒貴氏/中村 佳央氏/フコクしんらい生命保険株式会社 小林 新氏/
   サービスグラント代表 嵯峨 生馬
   モデレーター:株式会社Hyper-collaboration 吉田 裕美子氏

 

イベント動画視聴/資料請求、企業プロボノのお問い合わせはこちら

 

Session1  「越境学習とプロボノ」アカデミックと企業の視点から

 

 

講演①

企業にとっての越境学習の必要性とそのポイント

法政大学大学院政策創造研究科教授 
石山 恒貴(いしやま のぶたか)氏

 

キャリアの理想は「自律」、越境学習の学び=上下関係のなさ ×異質性(葛藤)×抽象度

 

越境学習という言葉自体は、立教大学の中原先生が経営学習論という本の中で言われた言葉で、10年を経て広がりをみせています。中原先生は、会社の中が職場学習、経験学習で、会社の外に出ることが越境学習と定義をされています。私は、もう少し広めに越境学習を定義して、境界を越えて学ぶということは、自分が心の中でホームと思っている場所とアウェイと思っている場所を行ったり来たりすることだと考えています。ホームとは、その場にいくと知人がいて、社内用語も通じて安心できるが刺激がない場所、アウェイと思っている場所は、見知らぬ場所で、社内用語も通じず居心地が悪いが刺激がある場所です。このホームとアウェイを行ったり来たりすることで、刺激を受けることが良いことと考えています。

 

 

越境学習について、人事部などが社員を積極的に外に出るように促していく企業主導の方式もあれば、個人主導のパターンもあると考えています。例えば、PTA活動など普段と違う環境に行くと企業の人にとって学びがあるので、個人主導の学びまでを含めて越境学習を幅広く捉えています。

 

インタビューから越境学習で何が起こっているのかを10年ほど研究していますが、所属企業から一時的に離れてプロボノに参加した経験者にプロボノ活動時のことをアウェイと捉えてインタビューをしていくと、アウェイの特徴は、上司がおらず、皆が主体的にそれぞれリーダーシップを発揮しなくてはいけない上下関係の無さ、社内用語が通じない、という環境です。プロボノプロジェクトに集まった人の中でも異質性が存在し、かつ、NPOと協働するとなると、ビジネスセクターとNPOの価値観の違いに戸惑い、ものすごく葛藤が起きたりしています。

 

企業でプロジェクトとしてやってくださいと言うと、自由にやってもいいよと言いながら、結構、企業としての落とし所やミッションがあったりすると思います。実際、NPOの運営基盤に取り組む時には、NPOが今後どのような事業戦略を考えているか、事業戦略のそもそもどこから手をつけていったらいいのだろう、という話になり、自分達でミッションを考え、短い期間でどうやって成し遂げようかと考えないといけないので、企業のプロジェクトよりも課題設定の抽象度が高く、ここでモヤモヤします。上下関係のなさ×異質性(葛藤)×抽象度の3点セットが学びになるのです。

 

経験学習は振り返りをしながら自分の専門性を高めることだとすると、越境学習ももちろん自分の専門性を高めていくのは前提としていますが、属する企業の価値観との異質性やモヤモヤを感じ取り、「それってうちの会社だけの常識だったんだ」と前提を覆され、自分の専門的な熟達を一度意図的に停止し固定概念を打破し、「こういう可能性や考え方もあるんだ」と学ぶこと、これが越境学習だと思います。

 

縦の糸=経験学習、横の系=越境学習

 

越境学習は、ジャック・メジローが提唱した変容的学習に似ています。自分のそもそもの価値観や世界観に疑問を投げかけて乗り越えて学んでいくことが変容的学習で、メジローが言うには、変容学習は、大きな病気をしたり大事な人に何かあったり、ライフイベントにきついことがあったときに変容学習が生じやすいと言っています。しかし、辛い経験をしない場合でも、越境学習で前提を問い直せる可能性はあると思います。

 

東京外国語大学の田島先生が言われていますが、生活文脈を共有している同士だと、わかったつもりになるのです。バスを待っている時、バス停で待っている人達はバスが来たとは言わなくてもお互いバスが見えていることにより状況を理解・共有できます。いつも同じホームや組織にいると、段々と主語を省略し、なにかを行ったりしても分かり合えるようになってしまいます。そうすると、わからない人を排除し、わかり合ったつもりになってしまという、恐ろしいことが起こるのです。
言葉を省略する間柄で人はわかり合っているのか、人は実は分かり合えないことを認識しながら対話することが大事なのではないか、ということを改めて越境学習は考えさせてくれると思います。

 

 

なぜ今、越境学習なのか、ですが、キャリア自律との関係性もあります。
「じりつ」という言葉は、漢字にすると自立と自律があります。自立は、親から自立するなど、何かから一人前になり、経済的自立することを意味します。自律とは、何かを自分で律するわけです。何かとは自分らしい価値観です。つまり自分で認識しながら環境変化にも適応して主体的にキャリア形成をしていくことが、自分を律すると言うことになります。
親から自立していても、自分の価値観で自分を律することができないこともあります。私の研究室では、会社の色々な人に忖度して自分を律するという会社にとって都合の良い自律ではなく、自分らしい価値観で自分を律するキャリア自律を重視しています。

 

最近よく言われるプロティアン・キャリアと言うものがありますが、これも自分なりの価値観を認識して成長していく、そのために変幻自在に自分を変えて変化対応する、自分を変えてもあくまでも自分らしい価値観があることがポイントになってきます。

 

もう一つ求められているのが、イノベーションです。クレイトン・クリステンセン他著『イノベーションのDNA』では、経営幹部のスキルとして分析ができたり、導入や実行ができたりする、というスキルや経験を挙げていますが、イノベーションのDNAとしては、違うことを関連づける力、現状に意義を唱える、新しい方法を観察する、多様な人と繋がる、まずは実験してみる、などのスキルの重要性を指摘しています。しかしこれはアウェイの環境でないとなかなか培いにくいのではないかと思っており、アウェイに行く越境学習こそが必要なのだと思います。

 

 

「越境」人材を組織に活かすポイントは周囲のサポート

 

本日の大きなテーマとなると思いますが、越境の課題です。越境学習に関する講演をすると皆さんに良い評価をいただきますが、最初の一歩をどこから踏み出したら良いのか分からない、という声をいただきます。

 

今、両利きの経営が言われており、既存事業を深める深化の人と、新しいものを探していく探索という組織能力の両方が必要という話があります。探索する人は越境学習者とイコールになりますが、大体、冷たくされたりするんです。既存事業を深める人から見ると、こちらは真面目に仕事をしているのに色々なところに出掛け、チャラチャラしてカタカナ語を振りかざして、と軽い人に見られ、冷たくされるということもあると聞きます。探索して知識を会社に導入することは、会社にとっては脅威に見えることにもなる事が理由かと思います。

 

本の執筆に当たり、プロボノに限らず、出向などの多様な越境体験についてインタビューした結果を分析してみました。越境学習のプロセスをカスタマージャーニーになぞり、越境前、越境中、越境後で何が起こったか、その人達にどのような変化があったのかを見てみたところ、インタビュー前の予想通り、越境中には様々な衝撃がありました。

 

一般企業から新興国やベンチャー企業に越境学習として行ってみると、ゴツゴツした現実の課題に対峙し、とにかくやってみて取り組む姿を目の当たりにし、自身が属する会社のように自然に組織運営で回っているという当たり前は存在せず、実はあと1週間で資金繰りが尽きるかもしれないといったような、ヒリヒリする緊張感があったりします。

 

新興国やベンチャー企業で働いている人と身近に接すると、自分は企業の縦割りの中でオペレーションを回していたけれど、この人達はあらゆることを行いながらも課題にも向きあっている、自分は足りないことが多いと衝撃を受けてしまうのです。そこで一旦気持ちが凹んでしまうのですが、なんとかくらいついて、戦力になり学びを得ていかれます。ただ、ここで、めでたしめでたしとはならず、実は本当の試練はここからなんです。

 

越境から戻り、属する企業での課題や経営に触れ、一段視点が上がったことで感じることを会社の周りの人に「みんな黙々とやっているけど、こんな課題があるからここに向かってこのようにやってみよう。」と熱量高く伝えると、「どうしたの? あなたは変わっちゃったの? うちの会社はすぐ変わるはずもないし、そんな熱量で言われても。」という感じで受け止められてしまうのです。
我々はこの現象を、穏やかな表現ではないのですが、越境学習者は2度死ぬ、と名付けました。

 

しかし、自分が属する会社が、熱量の高い発言をきっかけにすぐに変化していったら逆にびっくりしてしまうことで、越境学習者がいきなり熱量を高く伝えるのではなく、課題に取り組むためにこのような人を味方につけよう、ここからネットワークを作っていこう等ということを伝え、考え始めることの提案を行っていくことが、妥当なところとして落ち着くわけです。

 

キャリア自律のためのコーチングをされている方にお聞きしたのですが、越境をする前に越境を学習される方に「あなたらしい価値観はなんですか?」と問うと「私はこうです。」と語られますが、よくよく聞くと会社と自分の目的が同じで、自分らしい価値観が出てないことが結構多いようです。

 

越境学習をすると、会社経由で課題に接続しているのではなく、自分が課題と直接接続するようになるので、その中で自分はどうしたい、という今までの価値観からの引き剥がしが起こります。自分らしい価値観が会社を経由してではなく、会社とも社会とも同じ距離感で結ばれるようになると、自分らしい価値観が出て、かえって会社の価値観ともここが共感するからこうしたい、と考えられるようになる効果が生まれます。
 

越境学習者には、いろいろ葛藤しながら行動することと、自分の資源を動員して俯瞰できるようになることの間を行ったり来たりしながら学ぶと、ということが起こっていました。
越境学習を組織全体に活かすには、経営者、人事部門、上司のコラボレーションが必要で、人事部門がハブになると良いと思います。

 

葛藤自体が越境の学びになるのですが、もう一つ、社内で冷たく扱われることとともに風化が現れることもあります。最初は熱量高く考えていた越境学習者が、「目の前の仕事をやってみたら?」と言われ普段の仕事に埋没していくと、3か月後くらいに「越境した時は盛り上がっていたが、今となってはあの頃のことが夢幻のようだ。」と言う人もいて、すっかり元に戻ってしまう、という現象も起こっています。

 

こうならない為に、組織側は越境学習者に対してどのようにしたら良いのか。越境中も越境後も、上司が手取り足取りこうしたらとアドバイスしてしまうと、葛藤やモヤモヤを妨げてしまうこととなるので、関与は慎重にした方が良いのですが、越境学習者にとって一番辛いことは、関心が全くないことなのです。

 

一時的に自社から離れるような越境学習ではよくあることなのですが、越境学習から戻ってきたら上司が替わっていて、「3か月すっかり会社に穴をあけたみたいだけど、3か月リラックス出来たでしょうから、これからはしっかり会社で働くつもりで頑張ってね。」と言われ、越境学習したことが無きものとされる無関心が越境学習者にとって最もきついことなのです。越境学習に社員を送り出した人事担当者や上司は、越境学習に関心は高く持って、学習者への関与は慎重に、が良いと思います。どのような目的で誰を選んで、どこの越境の環境に臨ませるかと考えることが、運用上、大事なことだと思います。

 

越境学習は実はモヤモヤした学びとなることもあるのですが、会社を経由して社会に繋がっていた環境から出て、アウェイに行くことで直接社会に繋がり、その中で自分らしい価値観は何かと考え、自分は何者になりたいかと考えられるところに、越境学習の一番の価値と学びがあると思います。

 

越境学習はスキル的なことを学ぶ場でもありますが、自分は社会の中で何になりたかったのかを考えられるからこそ多様な人々とネットワークが出来、会社の価値観と一旦引き離れることができるからこそ会社にも価値を発揮できると思っています。

 

ただ、越境学習者が考える自分らしい自分が明確に組織側に伝わらないと、組織側も変化をすることができないので、自分らしい自分になった越境学習者が、草の根的にネットワークを作ることが大事です。そして、経営者や現場の上司が、社内ネットワークと草の根ネットワークと接続することができたら、理想的な変化が企業にも起こるのではないかと思います。

講演②

Twitter Pro bono Project 2021 その狙いと考察

 

Twitter Japan株式会社 リージョナル・ラーニング・リード
中村 佳央(なかむら よしお)氏

 

会社のパーパスに共感し実現する場として活用

 

私達がパーパスと言っているTwitter社のミッションは、We serve the public conversation(会話と議論に開かれた場を提供すること)です。
Twitterは、誰でも無料、匿名で自分の意見や考え、アイディアをアップロードし、それに対して誰でも参加することができる開かれたプラットフォームです。多くの社員はパーパスに共感して入社してきています。その一方で、特に営業職の社員は、3か月毎の売上目標を達成するために多忙で、パーパスには共感はしているものの、自分のやっている仕事とパーパスに距離がある、なかなか自分ごととして考えられない、という悩みや問題を抱えています。2021年度のTwitter Japanのプロボノプロジェクトも、会社のパーパスを社員個々人に引き寄せて考えることができる機会を提供したい、という背景がありました。

 

Twitterは無料で使えるプラットフォームですが、収益はユーザーのツイートとツイートの間に一部挟み込まれる広告ツイートによって得ています。全体の収益のうち89%が広告収益で、残りの約10%がツイートデータの外部への販売です。したがってプロボノに参加する多くの社員は、この広告を売る営業関連の仕事をしていると言うことになります。

 

Twitter社は、社会貢献活動を進めるにあたり5つの重点支援領域を定めています。インターネットに関する安全と教育、言論の自由と人権、機会の平等、環境保全と持続可能性、そして、災害や非常時の対応で、これらの領域で活動をしているNPO/NGOを重点的に支援しています。特に日本の場合、東日本大震災後にTwitterがコミュニケーションのプラットフォームとして注目されたということもあり、今回は5番目にあげた、災害や非常時の対応を支援しているNPO/NGOを、プロボノプロジェクトで重点的にご支援することにしました。

 

プロジェクトの実施期間は3か月でした。グローバル企業は3か月を1四半期としてビジネスを回す習慣があるので、3か月が参加者の体感として合っているだろうという理由からです。
プロジェクトの内容は、Twitter活用における支援先団体の個別課題を解決するための伴走支援です。NPO/NGO全体のおよそ50%はウェブサイトやFacebookを運営していますが、Twitterを積極的にうまく活用しているところは少ないように思いました。そこで、Twitterの運用マニュアル作成、マニュアルに従ったトレーニングやコンサルティングの実施を行いました。例えば、ツイートする人のペルソナの設定、目標やターゲットの見直し、オーガニックツイートと呼ばれる広告ではない通常のツイートの内容の見直し、認証バッジの取得支援です。Ads for Goodと言う100万円相当の広告枠を無償提供する仕組みがあり、希望する団体にご提供することも同時に実施しました。
2021年度は4団体をご支援しました。Twitter Japanのプロボノ参加社員は20名、1チーム5名の体制で行いました。新型コロナの影響を受け、グローバルで在宅勤務が義務付けられているため、全ての支援はリモートで実施しました。

 

本業への副次的波及効果が得られるプロボノ

 

プロボノプロジェクトを行った目的は3つです。Twitter社のパーパスを実現するという大きな柱のもと、1つ目は社会貢献の観点から、プラットフォームを運営する企業の社会的責任として、発信力に課題を抱えるNPO/NGOを支援することです。2つ目は社員の能力・組織開発として、普段の業務とは異なる役割を果たすことによる新たなスキルの獲得です。特に入社後ずっとリモート環境で仕事をしている人達は、なかなか部門横断的に働くことが難しいので、できるだけ色々な部門の人達との関係性を構築しながら能力を開発してほしい、という側面もありました。3つ目は、スピルオーバー=本業への副次的波及効果も目的にありました。オーガニックツイートの運用マニュアルを作ることによって、このマニュアルを広告出稿しようとしている会社さんに提供し、売り上げにつなげていく、という狙いです。

 

プロジェクトを円滑に行うために、Twitter Japanのコアメンバー4名とサービスグラントで、プロボノプログラム運営事務局を作りました。Twitter Japanはプログラムのデザインや予算管理、プロボノワーカーのリクルーティングや社内トレーニングを実施し、サービスグラントは支援先団体の募集や審査、社内説明会でのプログラム説明等の支援を行いました。まさに、二人三脚の体制で進めていきました。

 

支援先団体は、ピースボート災害支援センター、ブリッジフォースマイル、気候ネットワーク、ピッコラーレの計4団体です。
支援活動は、オンライン会議システムを活用し、すべてリモート環境で実施しました。1週間のうち1時間位を支援先団体にいただき、課題の聞き取りを行いました。その後チームにて、聞き取り結果を元にディスカッション、解決策の作成を行い、支援先団体にご提供するという流れでした。

 

参加社員の年齢層内訳は、20代 23%、30代 62%、40代 15%です。性別内訳は、男性62%、女性38%です。Twitter Japanの社員の平均年齢や性別構成比を概ね反映していました。

 

プロボノ活動後のアンケートで、「企業が社会貢献することの重要性を意識できたか。」を参加社員に聞いたところ、92%の参加社員が「そう思う」と回答しています。
「支援先団体の活動は、本当に世の中にとってすごく意義のあることをされていると思います。まだまだ必要な情報が行き届いていないのも事実です。それを広げていくのがTwitterの役割ですが、支援先団体の方だけで、その発信や活用方法を考えるのはとても難しいと思いました。それをTwitterの専門家である我々がお手伝いし、情報が世の中に広がっていくことは、企業の社会貢献として意義があると思います。」
「企業も人も、誰かのため何かの為に、利益とは別の部分で貢献することは重要だと思っています。自分達の保有するサービスで何かしら貢献できることがあれば、積極的に実施するのが当たり前の世の中になっていくべきだと思います。こういった活動や活動報告の発信が、当たり前の世の中を作る礎になるのではないかと思います。」との声がありました。

 

会社と自分の存在意義を再認識する経験

 

活動参加前に、「会社と自分の存在意義を意識すること」を目的意識として参加する社員は少なかったのですが、ある社員は、「入社後リモート環境のみで仕事をしており、他の社員とコミュニケーションを取る機会がなかったので、友達作りと言う気持ちで軽く活動に参加したのですが、他の社員とコミュニケーションが取れただけでなく、会社が何の為に存在していて自分が何をすべきかを再認識できました。」とコメントしています。
 

「本業ではできない体験を通じて成長できると思うか?」と参加社員に聞いたところ、77%が「そう思う」と回答しています。

「本業では関われないような社会課題に向き合うことで、それに対しての意識が高まることはもちろんですが、Twitterの意義を改めて考えるきっかけになり良いと思います。」
「やりがいも含めて新たな気づきを与えてもらう良い場になると思います。」との声もありました。

 

プロボノの意義についての参加社員のコメントを紹介します。
「所属する会社で得たスキルを社会貢献に活かせる機会は、他にほぼないと思います。自主的にボランティアに参加しても、ここまで業務のプロジェクトに近いレベルで、皆でアイディアを出しあったりするような深いTwitterの支援はできないと思います。社員が会社で働く意義をより強く持てるようになるのは、会社からのボランティア活動の支援があるからだと思います。」
「Twitterの存在意義、活用方法について改めて考えるきっかけになると思うので、プロボノの活動は賛成です。」
「プロボノ活動は、より良い社会を作っていく上で重要な活動で、また個の成長につながる良い機会にもなると思います。その活動を支援してくれるのは非常に良いことであると思います。」
「クライアント1社のみを担当する営業職なので、あくまでそのクライアント目線からのベネフィットに偏りがちだった視点を、リフレッシュできたのが貴重でした。自分が当初Twitterに入社を希望したきっかけである、プラットフォームとしての強み、特性を再度思い出すことができました。」

 

会社での仕事は分業による協業であり、自分のやっている仕事を、部分でしか感じられないことが多いです。広告の運用だけ、広告を受注するだけ、のように、自分の仕事の範囲が狭くなり全体感が見えなくなってしまいがちです。プロボノ活動をすることで全体の業務プロセスの中で自分の仕事が果たしている役割を理解でき、会社が社会に対して何をしているのかを俯瞰できる、それが結果的に会社のパーパスを深く理解し、それを自分事にすること、自分の仕事の意味を再解釈することにつながっているのではないか、と思います。

Session2 パネルディスカッション

 

 

Session2では、人材育成の専門家 株式会社Hyper-collaboration 吉田 裕美子氏のファシリテートのもと、石山氏、中村氏のお二人に、サービスグラントの社会課題解決型人材育成プログラム「プロボノリーグ」に社員を送り出されたフコクしんらい生命保険株式会社 小林 新氏、サービスグラント 代表理事の嵯峨 生馬も加わり、環境適応が難しいこれからの時代の人材育成や社会貢献、越境学習について、それぞれの立場で語っていただきました。
「社員へのアプローチ」「参加者の価値観の揺らぎ」「社内への浸透」「人事評価との関連性」など、実際にプロボノを企業に導入したからこそ見えてきたこと、人事部や上司の在り方などについて意見が交わされました。

以下では、パネルディスカッションの中でイベント参加者からいただいた、企業の皆さんにとって関心の高い、越境学習の企業への展開や評価等の質問と回答をお届けします。

 
Q1:社員への参加のアプローチはどのように行いましたか?

中村氏:入口は低くし、あえて越境学習という言葉を使わず、リモート環境の中でも社内での人的関係を築け、仲間が増えるといったこともアピールし、現在サービスグラントと行っているプロボノプロジェクトに参加してもらいました。Twitter Japanは、社員の多くがZ世代を含む20-30代で、彼らは社会貢献やプロボノによって企業が社会的的責任を果たすことに前向きなのですが、自分でどうやったらいいのか分からない、自分の強みとどうやって結合したらいいのか分からないという声をよく聞きます。会社としてプラットフォームを用意して、プロボノ活動へと背中を押してあげられるというのは良いことと思います。

 
Q2:越境学習を経験すると、会社経由ではなく、自らが課題と直接接続するようになり、その中で自分はどうしたい?と自分の価値観と会社の価値観を引き離すことが起こる、とのことでした。これは、どんなプロセスで起こるのでしょうか?
石山先生:活動参加は、立候補制、会社の指名制、立候補制にはしているが最後は人事部で決めているミックス型など色々あると思いますが、最初は気軽に参加してもらえるようにメッセージを伝える。そして、実際に活動の中で社会課題に向き合って、団体がこんなに情熱を持って活動していると知った時に、自然に価値観の引き剥がしが起こっていくと思います。越境学習の活動前に自身のキャリアの棚卸しを行い、活動後に振り返りをすることは重要で、プロボノなどで越境を経験したからこそ気付いた変化を大切にすることが、個人や企業の成長に繋がります。また、企業にとっては、プロボノや越境の場をどう使いこなすかを最初に定義することが必要です。

 
Q3:越境学習を社内に浸透させていくにはどうすると良いでしょうか?
石山先生:人事部門がハブになって経営者や上司を巻き込んで関心を持たせるということが一番良い方法です。他に、私の聞いた事例では、経営者や上司との飲み会の場に越境学習者に同席してもらい、その経験を語ってもらったところ、経営者や上司の越境学習への理解が深まったという話があります。また、上司に越境学習の現場に同席してもらい、様子を理解してもらうことで、越境学習の価値への理解が深まった例もあります。
小林氏:社内のうち人事を味方につけるという点に関しては、プロボノにはいくつもの効用があるので、フコクしんらい生命保険に限らず各社人事の目指す方向と重なることは多くあるはずなので、それを理解してもらい、支援を取り付けることは出来ると思います。
中村氏:Twitter Japanでも、どのように会社の上層部を巻き込むかは、このプログラムをデザインする際に考えました。1つ目は、社長と直接話をして、こういうことをやりたいのでぜひ協力してくださいと伝えました。社長は会社のミッションを浸透させる責任を背負っているので、その浸透にも役に立ちます、と伝えところ、ぜひ一緒にやりましょうという話になりました。2つ目は、管理職の集まりで、プロボノというものがあること、組織開発、能力開発に役に立つのでぜひ部下をチームメンバーに参加させてください、と話をしました。3つ目は、人事部が運用している目標や業績管理を行う人事管理システムの中に、プロボノプロジェクトの項目を入れてもらい、この3か月で成し遂げたいことを入力してもらうようにしました。そうすることで、上司も確認でき、メンバーの間にコミュニケーションが生まれて、無関心にならないようにしました。

 
Q4:越境学習やプロボノ活動は、どのように人事評価に反映されていますか?
中村氏:Twitter Japanでは、プロボノはボランティアなので、人事評価には入れないことは、最初からルールとしていました。参加によって将来の昇進が約束されるとか、ボーナスの評価に加わるとは言っていません。一方、人事評価システムには入力され、上司はプロボノで何をしているか、どのようなスキル開発が行われているのかはわかります。公式な人事評価には入っていないが、能力開発として“認識される”ことになるかと思います。上司への情報の一つにはなるものの、活動そのものは評価すべきではない、というスタンスです。
また、社員がプロボノに参加申込みを行う時のフォームに、必ず上司と事前に話をし、その内容を記入しないと申請ボタンが押せないようになっており、上司と会話をしてから参加するようになっています。また、活動後の風化を防ぐ取り組みとして、プロボノプロジェクトの後に、成果発表会を社内ウェビナーで実施したり、昨年度参加したメンバーを次の年度のコアメンバーにしたりすることで、プロボノが会社のDNAとして繋がり、風化しないような仕組みをとっています。
石山先生:上司の巻き込みは大事で、他団体での越境事例では、活動時に週報を出してもらい何が起こっているのかをリアルに把握している上司もいます。またある会社では、社員が越境経験から戻ってきたら、その社員を囲む場を作って語りあうことで、社内に越境体験を浸透させていく例もあります。成果発表会だけで終わるのではなく、日常的なゆるいコミュニティの場で、こんなことをしてきた、と話すことでさらに持続していく例もあります。
また、勤務時間中にプロボノ活動が許されている場合には、研修、またはそれと同等の扱いになるのではないかと思います。
小林氏:当社でも、人材育成の一環としてプロボノを活用しているので、参加前に目的を明確にし、所属部署で目標設定を行い、また活動の成果発表は上司にも見てもらっています。参加後は、プロジェクトメンバーからのフィードバックを確認し、日常業務とプロボノとの間で見えた行動の違いの振り返りを所属部署でやってもらうなど、日常業務とプロボノの経験を接続させる努力をしています。

 
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