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宮田 文さん(プロジェクトマネージャー)

 

自分自身のバランスを保つための“第三の場”を持つ

 

 

宮田 文さん
プロボノでの役割:プロジェクトマネージャー
参加プロジェクト:鎌倉てらこや(2012年7月~2013年3月)

 


 

プロボノワーカーとしてNPO法人の事業計画立案サービスグラントに携わった宮田 文さんは、「職場と家の往復だけではなく、自分自身のバランスを保つための“第三の場”が必要」と語ります。
“親が育ち、子が育つそんな地域をつくろう”と、家庭・学校・地域をつなぐ学びと遊びの場をつくる「鎌倉てらこや」のプロジェクトマネジャーとしてプロボノを経験した宮田さんに、登録のきっかけやプロボノを通して得られたことを聞きました。

みんなが“参加”できるバランスをつくる

 

宮田さんは2012年にプロボノワーカーとしてスキル登録をし、すぐにサービスグラント事務局からプロジェクトの打診があったのだとか。そのプロジェクトは、鎌倉てらこやの事業計画立案で、10周年を迎えた法人が、これから先の10年をどう考えるかというものでした。

 

「例えばウェブサイトの制作であれば、デザイナーがデザインをつくるといった、明確な役割がありますが、事業計画立案は、目に見える制作物ではないので、分かりやすいメンバーの役割というものがなかったんです。こうでなくてはいけないという役割がない分、プロジェクトマネジャーとして、ひとりに負担が掛かりすぎないようにしつつ、それぞれが達成感を感じられるように、みんながどこかでイニシアチブを持ってプロジェクトに関われるように配慮しました。」

 

ひとりに負担がかからないように、それぞれが得意な分野で関われるように。メンバー全員が初めてのプロボノ案件だったということもあり、手探りではありつつも、机上の空論にはしたくないね、という共通の思いがあったそうです。

 

「事業計画って、ともすれば理想論で終わってしまう。自分たちが提出する計画は、実際にどうアクションすればいいのか、その道筋が分かるものにしたいという思いがあったんです。」

 

メンバーのディスカッションは土曜の午後、サービスグラントの事務所で行うことが多かったそう。議論を大きくしすぎず、どこまで細かく落とせるかを注視したそうです。

 

NPO法人の“強さ”を学んだ

 

このプロジェクトを通して、宮田さんを含むメンバーは、それぞれファンドレイジングに成功しているNPO法人や企業のCSR担当者へコンタクトし、ヒアリングをします。

 

「ヒアリングしたNPO法人は、小さな組織である分、すべてのアクションの根本にはしっかりとしたビジョンがあることに気づきました。もちろん大企業にもビジョンはありますが、自分が仕事をしているなかで、ビジョンを感じながらひとつの仕事と向き合うことってなかなかないですよね。」

 

企業のCSR担当者へのヒアリングでは、企業がNPO法人を支援する際にはどのような視点を持つのかをクリアにしていきました。

 

「このプロジェクトでは、残念ながら企業側がフィットする部分が見つけにくかったのですが、企業がどうNPO法人を支援できるか、NPO法人はどんなポイントを企業に支援してほしいのか、その両面を見る機会は、普段の仕事では得られない学びになりました。」

 

宮田さんを含むメンバーは、鎌倉てらこやに対し、今後の10年をつくる資金調達施策と人材育成施策を主に提案。OB・OG会や後援会の設立で“参加者”を増やすなど、資金体制の盤石化についてのロードマップを提案しました。

 

 

自分自身のバランスを保つための“第三の場”を持つ

 

それでは、宮田さんがプロボノに登録した思いは、どのようなものなのでしょうか?

 

「長崎出身なんですが、小さい頃から教会に通っていて、社会活動に携わる機会が多かったんです。具体的には、『アンネの日記』の著者として知られるユダヤ系ドイツ人の少女、アンネ・フランク展、アウシュヴィッツ強制収容所展の実行委員や設営のお手伝いなどです。

 

利益とは関係ないところで人と関わることは、自分自身のバランスをとるためにいいかなと思っているんです。私は、よく言われる「ワークライフバランス」の“ライフ”の部分にボランティア活動も含まれていて、そこがないと、“ワーク”とのバランスが取れない。

 

現在は外資系企業でマーケティングを担当していますが、どうしてもどうすれば売れるかという“経済”の理論で考えがち。頭で考えてバランスをとるのではなくて、身近に“社会課題”と関わる接点があるほうが、うまくバランスがとれる気がして、どちらの活動もやろうと心掛けています。」

 

サービスグラントへのプロボノ登録は、知人からこういう活動があるよと話を聞いて、すぐに登録したのだとか。

 

「社会のためにとか、まったく気負っていないんです。あくまで自分自身のバランスをとる手段がボランティアだったというだけ。例えば、スポーツだっていいと思うんです。職場と家の往復だけでは、自分というものがふと分からなくなってしまう。外に対して、もうひとつ別の接点を加えるだけで、見える世界はぐっと広くなる気がします。」

 

少しでも迷いがあるなら、とりあえずやってみたらいいんじゃない? と、宮田さんは続けます。

 

「子どもが好きなら、子どもに関する社会課題を解決しようと取り組むNPO法人を選べばいいし、社会格差に関心があるなら、ホームレスを対象に取り組むNPO法人を選ぶとか。ボランティアをしてみたいけど、あと一歩が踏み出せないという人はきっとたくさんいると思うんです。社会との接点を増やそうと思うときに、とりあえず試してみるツールにしたらいいと思います。」

 

宮田さんは現在、プロボノワーカーとして得た経験を社内に持ち帰って、社員向けのボランティアプログラムについて会社へ提案を重ねています。

 

「会社に、社会貢献委員会という組織があるんです。社員向けのボランティアプログラムが提供されていて、被災地のボランティア活動などに参加したことがあるんですが、もっとこうしたらいいんじゃないかとか、頼まれてもいないのに提案するようになって(笑)。プロボノワーカーとしての社会との関わり方も社内で広めたくて、1日のワークショップをすることになりました。」

 

プロジェクトを用意して、あとは参加したいと思ったら参加するだけ。そうした機会づくりを社内でやっていきたいと語る宮田さんの表情は生き生きとしていて、印象的でした。

 

自分と社会との関わりは、意外と少ないもの。用意された接点を、自分好みに選ぶだけでいいなら、試しに、社会との接点をひとつ、増やしてみること。それは、自分自身を知るための近道なのかもしれません。

 

※掲載内容は2014年4月取材時点のものです。

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