MENU
ログイン
プロボノワーカー
のみなさん
団体
のみなさん
閉じる

開催レポート「企業にとってのプロボノの価値とインパクト

 

企業人のスキルや経験を社会課題の解決に活かす「プロボノ」。

その取り組みは、ボランティア活動にとどまらず、社員の成長、組織の活性化、地域との関係構築など、企業・社会・個人それぞれにとって多面的な価値をもたらす活動です。

 

複雑化、多様化する社会課題を目の前に、単一企業だけでなく、地域やNPO、他業種の企業と連携しながら共に取り組む動きが広がっています。

その中で、プロボノは「社会課題とつながる越境体験の場」「課題解決を試行する実践の場」として、企業のCSRや人材育成の文脈でも注目されています。

 

今回のイベントは、多数の企業でのプロボノ導入をサポートする「サービスグラント」、石川県能登地域で企業連携による復興支援を行う「プロボ能登(共同事務局:LINEヤフー)」、そして組織を越えた社会課題解決に挑む「Beyonders(ETIC.、ロート製薬、アビームコンサルティング、日本航空)」の3団体が連携。

それぞれがプロボノのプラットフォームを運営し、企業の社員にプロボノの機会を提供している視点から、これまでの活動から見えてきた変化や成果についてご紹介しました。

 

また、多面的な価値ゆえに、社内での説明が難しく、具体的に「どの予算元で、どのような成果を求めて活動を進めるべきか」という悩みが生じやすい現状に対してもヒントとなるよう、主催団体が培ってきた多様な事例や活動の背景を共有しました。

 

開催概要

 

日時:2025年11月27日(木)15:00-16:30

開催方法:オンライン

プログラム:

1.オープニングトーク:日本国内におけるプロボノのこれまでと現状

2.クロストーク

3.グループトーク:参加者同士の感想共有や質疑応答

 

オープニングトーク:日本国内におけるプロボノのこれまでと現状

 

登壇者:認定NPO法人サービスグラント 津田 詩織

 

プロボノの定義と目的

津田:オープニングトークでは、活動開始から20年となるサービスグラントが携わった企業プロボノとその変遷についてご紹介します。

プロボノとは、職業上のスキルや経験等をボランティアとして提供して、社会課題の解決に成果をもたらす活動です。近年では、NPOや地域団体、ソーシャル企業など、社会課題解決に取り組む組織を支援するかたちが主流になっています。

プロボノが目指すのは、NPOや地域団体の運営基盤の強化です。人材も資金も情報も経験も限られた中で活動を回しているというNPOの現状に対し、情報発信や資金調達、事業戦略いったことをプロボノで支援することによって、より多くの必要とする人たちに活動を届けていくのがプロボノの意義だと考えています。

 

日本国内の広がり

津田:この20年間、プロボノがどう広がってきたか。参考として、サービスブランドの登録者数は、現在約1万人に登録いただいており、ソーシャルや、プロボノという関わり方に非常に関心が高まっていることがわかります。

企業の動きとしては、2010年にNECやIBMとの協働がスタートし、そこから多くの企業さんが取り組まれ、広がってきました。

 

企業がプロボノに関心を持つ背景

津田:企業の皆さんがプロボノに関心を持ち、導入が増えてきた背景を、日本経団連の社会貢献活動に関するアンケート調査の結果からご紹介します。

企業の社会貢献活動への期待で一番多いのは「社会の一員としての責任」というCSR分野での関心なのですが、2005年から2024年の20年で大きく伸びたのが、「企業理念やビジョンの実現」「社員が成長する機会」「モチベーション向上や帰属意識」、あとは「ブランディングによる採用時の訴求力」といった点です。社会貢献というよりは、人材育成やエンゲージメント、企業価値そのものを上げていくというところに、社会貢献活動をツールとして考える企業が増えているのです。

 

プロボノ導入の四つの理由

津田:では、企業が今どんな形でプロボノを導入されているか、四つの理由に分類してみました。

  1. 社会課題解決への貢献 
  2. 人材育成組織開発
  3. 企業価値の向上
  4. 社員のエンゲージメントの向上

その軸となるのが、越境体験を通じて得られる成長です。

導入事例としては、企業の強みを活かす(社員のスキルや経験を社会課題解決に活かす)ケースや、人材育成的な観点から次世代を担う若手リーダー向けに、越境体験を通じて外の視点を得たり、自分の強みを認識したり、リーダーシップや課題解決能力を養う研修形式も増えてきています。

 

プロボノの位置づけと成果

津田:サービスグランドの企業の中での実績では、人事からの研修としての参加が60%、CSR・社会貢献が24.5%、あとは経営企画などです。参加社員数ではCSRとしての活動の方が多くなっています。人事の領域が多いゆえに、業務時間内でプロボノを捉えている企業も多いです。

企業プロボノによる支援先団体の満足度は高く、98%がプロボノ支援を「良かった」と回答しています。

社員側へのアンケート結果では、皆さん社会貢献の重要性を認識したり、会社の社会貢献が企業価値観に良い影響を与えていると認識されたりしています。人材育成の観点では、本業ではない体験を通じて成長できる生きがいややりがいに気づく機会になるという声もいただいており、企業の社員の皆様にとっても価値ある活動になっていると考えています。

参考:プロボノ白書2025 -20年の軌跡が拓く、共創の可能性-

 

クロストーク:各社のプロボノプラットフォーム事例

 

Beyonders(ビヨンダーズ)/ロート製薬、NPO法人ETIC.、アビームコンサルティング、日本航空が共同運営

https://beyonders.etic.or.jp/

Beyondersは「組織を超えろ、世界を変えろ」というコンセプトのもと、組織の壁を越える共創を目指す「and Beyond カンパニー」という複数の企業とNPOの取り組みを背景に、約4年前に立ち上げました。

私たちはこのプラットフォームを通じて、二つの慢性的な課題を解決したいと考えています。一つは、地域の社会起業家が直面する、人材や資金といったリソース不足。もう一つは、都市部の企業にいる、ソーシャルなことに関わりたい、熱量をどこかに向けたいという社員の方々の存在です。

私たちはこれらの方々を結びつけるマッチングをしていますが、特徴的なのは、スキルのマッチングではなく、「共感でいい」という入り口にした点です。プロジェクトに取り組むきっかけやハードルを極力下げたかったため、同じ課題感がある、一緒にやりたいという共感で始めていただいています。

プロジェクト自体も、業務手順が明確なものではなく、まだどうしていいかわからない「生煮え」の状態でも歓迎しています。さらに、お試しでのプロジェクト参画ができるよう、活動期間を1回3カ月で区切っています。双方に継続の意思があれば続ければ良いですし、そこで一旦終わりという選択肢も設けています。

 


 

プロボ能登/LINEヤフー株式会社

https://probonoto.yahoo.co.jp/

「プロボ能登」は、被災地支援に特化したプロボノのマッチング機会を提供しています。

LINEヤフーは合併前から災害支援に取り組んでまいりましたが、能登半島地震の際、深刻な人手不足に対し、私どもが持っているプロボノの仕組みを活用できないかと考え、能登官民連携復興センターさんと連携してプラットフォームを作ることになりました。

プロボ能登は、地域の支援団体からニーズを伺い、共同事務局がプロボノプロジェクトを組成します。それを加盟企業(現在、DENSOやNECを含む複数社が加盟)の社員の方々に応募いただき、マッチングを経てプロボノを進めるスキームです。支援先は非営利組織に限定せず、現地の事業者さんも対象としています。生業が成り立たないと復興は難しいという考えからです。

活動の特徴としては、オンラインでの支援に特化している点です。オンラインでのコミュニケーションが可能であること、そして最大でも3カ月から4カ月という期間で設定できることを条件としています。具体的なプロボノ事例としては、アンケートの集計分析といった一般的な業務から、IT企業ならではのサイトの制作や開発レベルのものまで幅広く対応しています。

 


 

プロボノBiz(プロボノビズ)/認定NPO法人サービスグラント
https://www.servicegrant.or.jp/about/corporate/

企業向けプロボノサービス「プロボノBiz」の枠組みについてご案内します。

サービスグラントはおかげさまで活動開始から20年を迎え、「NPOのためのNPO」という中間支援の立ち位置で、社会課題を前に、立場を超えて協働ができる社会づくりを目指しています。その具体的な手段として、社会人が培った仕事の経験や得意なことを生かし合うプロボノを推進しています。主に企業人の方々がお仕事をしながらでも参加しやすいよう「プロジェクト型協働」として、最短1カ月から期間とゴールを定め、具体的に使える成果物を届けるという特徴を掲げています。

企業の導入スタイルは、大きく分けて二つあります。一つは個社で取り組む枠組みで、人事施策やCSR施策として多様な位置づけで取り組まれています。もう一つは、複数社が人を出し合い、異業種のメンバーチームで課題に取り組んでいくスタイルです。例えば、若者に居場所や住まいを提供する団体さんに対し、異業種チームが課題整理から成果物作成まで協働するプログラムなどを実施しています。

 

クロストーク:企業がプロボノに取り組む目的

登壇者:
ロート製薬株式会社 広報・CSV推進部CSVグループ 徳永達志

LINEヤフー株式会社 サステナビリティ推進CBUCSRユニットCSR推進ディビジョン LINEヤフープロボノ・ボランティアプロジェクトPM 田村夏子

認定NPO法人サービスグラント 代表理事 岡本祥公子

聞き手:認定NPO法人ETIC. 腰塚志乃

 

――まず、企業として、なぜプロボノに取り組むのか。各社の目的、取り組みの経緯を教えてください。

徳永:ロート製薬は2016年から副業を解禁し、会長の山田が「社員は会社の所有物ではない」と言って話題になりました。社員は社会全体のものでもあり、社会課題や地域に対して役に立っていくべきだという考え方が根底にあります。社員が成長して、また自社の事業にも生かしていけるということも当然あるだろうと考えています。

その上で、自社の中だけでは経験できないことを、社会に出て自ら学び取っていかなくては。越境学習をやっていかなければならないと考えています。

また、弊社では、40代、50代は、外に出て仕事を作ってこいというふうに言われるのです。経験を積んだ方が外に出て行かなくてはならないのですが、出て行き方がわからない。ソーシャルには興味あるけれど、いきなりドアを叩くのはハードルが高いという中で、そのきっかけを作る場としてもプラットフォームが有効だと考えました。

プロボノは、弊社では今、人事研修としての位置づけにはなっていません。研修にするには、期待した効果の確からしさという要件が必要なためです。越境学習は「自分が学ぶんだ」という意識がないと、なかなか効果を得づらく、本人によるところも大きい面があります。ということで、我々CSR部門からのプログラム提供と位置づけています。ただ、業務の時間の一部を使えるという意味では、その中間的な意味合いになっています。

 

田村:LINEヤフーでは、もともとYahoo基金の仕事をしていた時も、人手が足りなかったので、社内でボランティアを募ってNPOを支援する役割を手伝ってもらっていました。

合併する前のタイミングで、執行役員が「プロボノやりたいんだよね」と言い出し、社内のボランティアとは別にプロボノに取り組もうと、いろいろとヒアリングや調査を経て、2023年10月にプロボノプロジェクトを始めました。最初は小さくやるつもりでいたのですが、能登の地震があって、人手が足りないというニーズが上がってきたので、このプロジェクトを使って何かできないかというところで、想定外に大きなプロジェクトになってしまったというのが、現状ではあります。

 

岡本:私たちが企業の皆さんと接する中で、10年くらい前までは、プロボノに対して「ボランティアを会社がお金をかけて推進するんですか」と、なかなか理解を得られない悩みがありました。CSR先進企業は、寄付にとどまらず、そこに社員が参画できる機会としてプロボノに関心を持ってくださったので、社会貢献活動としてCSRに厚みを持たせるところにフォーカスがあったのだと思います。

「人生100年時代」が話題になってきたあたりから、だんだんキャリア施策としての側面が強まりました。大企業の中でプロジェクトを中心となって回す機会が少ない社員への経験機会の提供シニア層のセカンドキャリア支援、そして最近は越境学習の需要が高まっています。今は、SDGsやサステナビリティ経営を背景に、人事施策や人的資本経営との連携ニーズも高まっています。

 

――サステナビリティ経営が本丸になっていったから、それを担う社員の人たちはもっと社会との接点が増えた方がいいよね、と、プロボノが注目されているのですね。

岡本:イノベーションを起こせと言われた時に、誰とどうつながってイノベーションが起こせるんだろう、とHowの部分で皆さん手持ちのものが足りない。そこで異業種で協働することがそんなに不思議ではなくなりました。競合というよりも、一緒にマーケットをつくっていこうみたいな風潮はだいぶ加速したのだろうと思います。

 

田村:プロボノ活動された方に話を聞くと、意外に自分のスキル役に立つんだみたいな声もいただきます。会社の中でずっと仕事をしていると、外で通用するのかどうか不安ですよね。会社で機会を作ってくれるとやはり入りやすいし、実際やってみたら意外に「自分、役に立てるな!」と発見にもなったりと、広がりますよね。

 

岡本外に出るからこそ相対化されて「自分は割とできるじゃん」と自信を確認する効果は、企業として呼びかけるからこそインパクトが高まると実感しています。

 

――次に、何を成果と考えてるかというところをお聞かせいただけますか。

徳永:私はやはり個の成長っていうのがあると考えています。挑戦したいっていう意思をどうやって会社として応援できるのかと考えているので。短期的には成果が見えづらいところはありますが、地域や社会課題の理解が深まったとか、普段の仕事のネットワークでは関われない人との出会いとかパッションに触れられたとか、意外と役に立てたという効力感とか、「これで人生変わったありがとう」と言われたりもします。

 

田村:弊社では、プロボノ活動ついて3つの貢献を考えています。

  1. 企業への貢献:プロボノ活動を通じて企業のブランド価値が上がっていくこと。
  2. 従業員の貢献:社会貢献への参加の機会、自分の効力感、スキルの向上など。
  3. 社会への貢献:社会課題をいくつか解決すること、解決するお手伝いができること。

この3つ、三方よしではないですが、みんなにとって良いというところを考えていきたいなと思っています。また、関係人口などを含めた具体的な指標を設定し、成果の可視化を検討しているところです。

 

岡本:最近の事例では、幹部候補生の育成プロセスの一つ、経営塾として、生の課題をどうやって解いていくのかを実践する機会に置かれるとか、サクセッションプランの中に位置づけられるケースも出てきました。社会的価値を創造することを戦略の中に掲げ、プログラムを実施している企業や、インパクト評価に取り組まれる企業も出てきました。

 

――傾向として実用性が高まってる感じはしますね。

岡本:一方で、やはり社内に導入していくとなると、どうやって説明をして納得させられるのかを悩んでいるというお声もあります。

 

徳永:人事研修として位置づけていない弊社でも、人事部ももちろん連携してやっています。個の挑戦を応援したいという企業の姿勢としても、全社的にやっているところです。人生100年時代に、会社として、社員に対してどんなキャリア設計と機会を提供していけるのかというのが、責任だと私は思うのですね。その機会を提供できないというのは、かなりリスクだし、そういった会社は今後選ばれなくなっていくのだろうと思います。

 

腰塚:Beyondersで言うと、人事メインで研修として入れたいというご相談は多くいただくのですが、人事部門が表に立って主導してくれてうまくオンボーディングできたってことは実は1回もなくて。人事施策としてだけで成果を測ろうとすると、すごく測りづらいのですね、プロボノって。意図的に計画して育成するわけじゃなくて、何が起こるか分からない場に飛び込むことに意味があるみたいな感じなので、再現性がないという意味においては、すごく評価しづらい。結果、サステナビリティ推進とか事業開発の機会として持ちながら、育成機会でもあるので人事とも連携します。人事のKPIや事業評価の物差しが合わないので、特殊な位置づけが、Beyondersは割とやりやすいところです。

 

岡本:私がご一緒したサステナビリティ推進担当の社内での口説き文句には、「新しい事業のネタを拾えるチャンスなんだ」というものがありました。明後日の飯の種を拾いに行く、社会課題のマーケティングであると。リアルなところに足を運んで、そこでの実体験を持ち帰れることは、すごく貴重だという説得の仕方で、浸透されたということも伺いました。

 

――3社ともオープンプラットフォームでやっている理由、なぜ自社だけでやらなかったのかもお聞かせいただけますか。

徳永:越境という機会の中には、普段の業務の中では知り合えなかったような業界や考え方や世代の人たちっていうのがやっぱりいるわけで。かつそのプロジェクトのオーナー側は、ほとんどの方が接したことがない、ソーシャルなアクションを熱量高く、責任を持ってやっておられる方々です。「こういう人がいるのか」というのは、すごく学びになるところが多いと思っていますので、多様な人たちと一緒に共創していくということはやはり大事。そこを社内で閉じていたら、目的の半分も達成できないのではないか。オープンであるのは必須かなと思っています。

 

田村:プロボ能登は、もともとLINEヤフー1社だけで活動していたのですが、ニーズが予想以上にあり1社では賄いきれない、他の企業も協力してほしいというところから始まっています。入り口は逆なのですが、やってみると、やっぱり企業によって考え方がめちゃくちゃ違うので、すごく刺激になる異文化体験があるし、地域の会社の方とお話しすると、東京で考えている感覚と全然違うこともあって、本当に自分の栄養になる。違うメンバーと違う環境で一緒に何かをすることは、本当にためになるんだなと実感しています。

 

徳永自分が何のために働いているのかっていうのを問うきっかけになっていることも結構ありますね。プロジェクトオーナーの方と話して、「社会の課題のために、こうやって身を粉にして働いてる人がいるんだ」って、かなり感じるところがあると思います。

 

岡本:サービスグラントは、基本スタンスはずっとオープンです。オープンにいろんな人とタッグを組みながら、無理がない形でちょっとずつ出し合いながら、課題は減らして次世代に渡していくというのが、あり方としてはとても大事だと考えています。

今、ソーシャルとビジネスの境目がだんだんなくなってきていると思います。オープンに協力し合える環境をもう少し広げていくところに、プロボノは機能する。そして、人としてのプロボノ経験で培ったネットワーク・信頼関係がそのまま企業に持ち帰られて、次の動きになっていくことの方が、すごい利益につながるのではないかと思います。

 

――IT化が進んでいるとか、働き方が変わってきて柔軟になっているとか、リモートワークできているとか、いろんな変化によって、特にカジュアルに動きやすくはなってきているので、無理なく、機会を作っていけるチャンスでもありますね。プロボノに参画する企業が増えていくことで、また大きなうねりが生まれていくと思うので、ぜひ一緒に動いて、発信もしていければと思います。

 

お問い合わせはこちら