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[1000件達成記念]未来展望 〜社会の大変化に、大企業はプロボノをどう活かせるか

2020年冬より実施している「プロボノプロジェクト1000件達成特別企画」として、改めて、多様な視点から企業にとってのプロボノの可能性を探るインタビューの第3弾。

今回は、「オープンイノベーション」「人材育成・組織開発」に専門的な知見をお持ちの渡辺薫さん、吉田裕美子さんをゲストに、それぞれが思う大企業の現在地や、プロボノ活用の可能性について代表の嵯峨も交えてお話いただきました。

 

渡辺 薫氏

ゴール・システム・コンサルティング株式会社 

チーフ・カスタマーサクセス・オフィサー(CCSO)

ハイテク企業でR&D、経営企画、マーケティング等を経験したのち、90年代のデジタルマーケティングの黎明期にはエバンジェリスト&コンサルタントとして活動。その後、外資系ITサービス企業等でITサービスのマーケティング、コンサルティング等に従事し、2010年日立製作所に入社。超上流工程のコンサルティング手法の開発と指導にあたるとともに、日立グループ内でのTOC活用に尽力。2018年からは日立製作所社会イノベーション事業推進本部エグゼクティブSIBストラテジストとして、日立グループのデジタルトランスフォーメーションの戦略策定・実行のサポートと人財育成に注力し2021年3月に退任。2021年7月から現職。

 

吉田 裕美子氏

株式会社Hyper-collaboration 代表取締役 

株式会社野村総合研究所に入社後、英国野村総合研究所ヨーロッパにてシステム開発および新人教育を担当。日米間のシステム統合のプロジェクトマネジャーなどに従事する中で、企業の中で真に人財が活かされ、組織が繁栄するためには、ITシステムだけでは不十分であると実感したことから、「組織と人の開発」に専門を移行し、2013年に株式会社ジョイワークスを創業。学習による組織開発、リーダー育成、グローバル人財育成などに従事。2020年、テクノロジーの力でコラボレーションと社会変革を実現する、株式会社Hyper-collaborationを設立。

 

本業とCSRのあるべき姿とプロボノの関係とは ー真逆の効果を活かす

 

渡辺)最初の問題提起。私からみていると大企業ほどCSRに取り組まなくては、と一生懸命ですが、多くは本業と無関係の別枠でCSR活動しているように見えます。プロボノの場合の企業側の位置付けとはどういうものですか?

 

嵯峨)サービスグラントが協働している企業の皆さまは、本業とのリンクを非常に意識されていて、社員のイノベーションマインドを高める人事的側面や、会社のブランディング、CSVとしての本業への還流などを意識してプロボノを位置付けておられます(*1)。CSRの施策として始まる場合にも、プロボノは社員のビジネスにおける経験を活かすことが前提なので、必然的にCSRと本業とがつながる取り組みになります。ただ、プロボノに戦略的に取り組まれる企業の絶対数がまだまだ少なく、一般的なボランティア活動の実施をもってCSR活動とされているケースも決して少なくないだろうと推察しています。

 

渡辺)私個人的には本来CSR活動は、本業そのものであるべきだと思っています。本業を推進する中で人が育つとか、例えば物流の取組みが交通渋滞を減らす、二酸化炭素排出を減らすなど、本業を通じて社会に貢献することが本筋で、そことはかけ離れたことをCSRとしてブランディングの一環のようにするのは違うのではないかと違和感があるわけです。

 

吉田)企業活動はそもそも、社会の問題を取り除いて解決する。その対価として収益が入ってくる、この循環に他ならないのですが、現在は利益追求が先行してしまって、わざわざCSRという言葉を使って視点を動かさなければならない状況に陥ってしまっているのだなと思います。

 

渡辺)CSRが本業とは別のものだと認識してしまうと、CSR活動に対して人、物、金の資源を差し出すには、本業とのリンクやシナジーを見つけなくてはならない!となってしまいますよね。CSR活動はそもそも本業の延長、もしくは、一部として取り組むのが当たり前という意識に変えることも今必要とされるのではと思うわけです。

 

嵯峨)本業の延長としてプロボノに取り組む意味を考えてみると、成熟した産業においては、今ある事業をどう伸ばせるか、というボトムアップ発想になりすぎてしまうところがあると思います。一方、ソーシャルセクターは、圧倒的にニーズの視点から物事を考え、立ち上がっていく特性があり真逆にあります。本業にどうつながるかは、”わからない”。けれど、ソーシャルセクターとつながってみることで、普段とは逆の発想から考えていく刺激を、会社の中に取り込んでいくことも必要だと思います。

 

(*1)参考:[1000件達成記念]企業CSRのキーパーソンが語る、企業プロボノ導入の実感

 

大企業が真剣に取り組むべき3つの課題

 

渡辺)大企業にいた立場から、これは本当に真剣に取り組まなくちゃいけないと思うことがあります。大企業病と言われる一つかもしれませんが、効果が明確で確実に出るものにしか取り組まない短期思考になっていて、「やってみないとわからない」「もしかしたら3年後に花開くかもしれない」ということには消極的になっている感覚があります。

世界的に見ても日本の大企業が色々なイノベーションに取り組むのが遅れたり、海外に置いていかれた大きな反省があるわけですが、供給者目線、つまり、使う人の目線を忘れる。自分の近くしか見えない。目線が狭くなってしまっていると思います。社員一人一人が視野を広げることをしろと言われないし、広げるようなチャンスが社内にない。もしくは、組織内にイノベーションに取り組む部署はあるが、その部署内に止まってしまうという現状もあり、課題認識の一つ目です。

 

嵯峨)稼ぐことが命題とされる事業部は数字を背負っているし、この部署ではこの商品を売るという役割がはっきりしているのは、組織を維持していくために必要とは思いますが、役割が硬直化していくという側面はあると思います。

 

渡辺)二つ目に、自社でイノベーションに取り組んでいるとうまく行かないと思うポイントは、異文化や驚きとの出会いが少ないことです。

企業の目線で社会課題を見に行こうとすると、まずきっちりと調査計画を立ててから調べに行きますね。計画を立てている間に、自分の知りたいことや自分が思い描く範疇におさまっていって、結局、知っていることしか見つからない。「異文化との出会い」や、「えっ、こんなことが起こっているんだ」という驚きを得る機会は少なくなってしまうのです。

プロボノというボランティアの現場はそれと真逆の、自分たちの想像とは違うことが起こる。

強引に気付きや発見が与えられる、そんなことが起こったりしていますか?

 

嵯峨)NPOなどのソーシャルセクターは、企業と規模感や組織のあり方も全く違いますし、文脈も共有できているとは言えません。そうしたところに飛び込んでいけば、想像とは違うことが起こります。プロボノに参加される方には「日頃のビジネスのスキルを活かして」と申し上げていますが、日頃のビジネスの感覚そのまま、では通じない場面に出会うことも、プロボノの一面の真実なんですよね。

 

吉田)「いい意味で強引に経験させられること」が私も必要だと思っています。私は元々は大企業にいてその後個人で独立して仕事をしている時間も長かったのですが、ビジネスセクターではどうしても経験できないことがたくさんあります。それは、社会問題が集約されているような弱い立場にいる人達が本当は何を経験して痛みを感じているのかを肌で感じること。大企業にいるかどうかはあまり関係ないようにも思います。最初に私が、ビジネスでは経験できないそれを経験したのは子どもを産んだ時です。仕事を休んで子育てをしなければいけない、地域の人と関わらないといけない、小学校のPTAや地域の人たちと一緒に付き合っていくことが、社会に目を向けた最初の経験でした。

弱い立場にいる子どもの目を通じて初めて、社会の動きが分かり、会社を興すに至れたのは出産を経験したからだと思います。

社会問題が集約されている現場に強引に目を向ける、触れてみる経験は、自分から能動的にいこうと思ってもなかなかできるものではありません。ビジネスの世界にいる人と、社会課題が集まるところにはなかなか接点がないんだな、社会課題を改めて知る機会がないんだなと感じました。

 

渡辺)今、色々な人や企業が、オープンイノベーションをやらなくちゃと言っていますが、私の今までの経験から見て、大企業のカルチャーは、オープンイノベーションに全く不向きです。新卒入社で優秀な社員として育ってきた人たちがオープンイノベーションの現場に出て、力を発揮しきれない状況があちこちで起こっています。

 

吉田)同じ文化の中にいる限られた人たちだけだと、どうしても想像力の及ばないエリアが必ず出てきてしまいます。オープンイノベーションにおいて、自分が発したことが誰にどのように伝わるのか、相手が話していることがどういう意味なのか、相手の立場を理解して咀嚼しながら聴いて、自分の立ち位置を決めていくところが大切だと思いますが、先程の供給者目線で物事を進めてしまう話題と同じで、「当たり前の文化」を共有している人たちだけが集まっても異文化がわからないし、自分たちにとっての当たり前が、社会一般にも通じるという無意識の誤解が生じているな、と感じることもあります。

 

渡辺)オープンイノベーションが起こっている現場では関係は完全にフラットで、ヒエラレルキーは存在しません。フラットな関係で仕事をしたということがない、または、フラットな環境で仕事ができない人は、オープンイノベーションの場で仲間外れになってしまう。

 

吉田)逆に、フラットな関係を社内でやってみてください、と言っても、社内にいる限りは常に肩書きがついて回りますし、相手もその肩書きをみなして接してきてしまうので社内で、フラットな関係の場を提供するのは難しいと思います。

 

渡辺)フラットな関係や、環境の中で物事を進めていくと同時に、オープンイノベーションが起こる現場の特徴は、フルスピードで始まっていくということです。ちょっとずつ仲良くなってという余裕はなくて、出会ってこれがいいね、こういうことが求められる、これを実現していきたい、となったらフルスピードです。これは大企業の中ではあり得ないですよね。大企業では、スタートする前に計画を立てて、関連部署の了解をとって、根回しをしてほぼほぼみんなの了解がある状態からしかスタートしないわけです。

仕事の話は後でまずはお互いのことを知って仲良くなりましょう、という順番ではなく、仕事の話で意気投合したから気持ちよく飲みにいきましょう、という順番で、新しいオープンイノベーションはのんびり構えていると無理なんですね。フラットな関係で、お互いのことがよくわからなくても、ゴールに向けて最初からフルスピードで始まっていく。そういうこれからの時代に対応するために必要な経験を積める環境や場を大企業の中には得にくくなっている。これが三番目の課題認識です。

このいずれの点においても、サービスグラントが提供されているプロボノプロジェクトという現場は、大企業がなんとかしなくてはいけない課題克服のための場として最適なのでは、という気がしているのです。

 

嵯峨)手触り感のある規模だからこそ、伸び伸びできる、変なプレッシャーもなく、ガチガチにならない程よいリラックス感の中で活躍いただけるところはあると思います。会社の中の上下関係はプロボノの中では関係がないので、指示命令系統とは別次元の環境に出られるというのは参加される方にとっても解放感があるのだと思います。プロボノプロジェクトは単一企業の中でチームを組むケースも多いのですが、それでも「はじめまして」から始まり、社内のいろいろな部署の人に出会います。ましてや、社外の人とチームを組んだ場合にはなおさら、プロジェクトの中で何を言ったとしても成績に反映されないし、上司に何を言われるわけではない環境で自由に話せることが、楽しさの源泉でしょう。プロジェクトを通じて、ご自身が「やれる」と思ったら、さらにご自身への自信も深めていただけると思いますね。

 

プロボノのバリエーションの中に、ママボノという取り組みがあります。復職する前の女性は、仕事と子育てとの両立、家庭内の家事分担の問題や、ビジネススキルを復職後にどう発揮できるか、特に、お休み中はコミュニケーションが家庭内や限られた場に閉じてしまうので、お子さんやママ友との会話とは違うビジネスの会話にスムーズに戻れるかなど、ありとあらゆる不安を感じています。復職に向けたウォーミングアップとしてプロボノに参加をして、ほかの人からも良いところをフィードバックしてもらったりしながら、自分はできると自信を持って本業の仕事場に戻っていくということが起こっていて、それと似通ったところがあるなと思いました。

 

カスタマーサクセスの潮流、惜しみない貢献へのリターンとは

 

渡辺)大企業の社員のスキルや知識は、意外と自分で自覚しているより外で役に立っているということはありませんか? 大きな会社の中にいると、どちらかというと、自分に自信を持ちにくい人が多いと思います。外に出てみて、自分が普段、当たり前にやっていることが社会の役に立つのだと知って、元気になる側面もきっとあるのではと思うのですが。

 

嵯峨)ものすごくあります。プロボノに参加される多くの方が、周りが認めている以上に謙遜されていたり、私の何が役に立てるでしょうか、という方がかなり多いです。「プロボノだと、支援先の団体からすごくありがとうと言われる、役に立ったという実感が得られるところがとてもいい」とおっしゃいます。日ごろ何気なくつかっているビジネススキルが、社外に出てみると想像以上に感謝されるということもあります。

 

渡辺)今日の話で、「プロボノの活動は、本業に取り組んでいく上でも、新しいことに取り組む底力をつけていく上でも有意義な仕事であって、その上に、気づかなかった社会のニーズを得ることもできるし、やってみたら、ボランティア活動としてCSRにも繋がっていて、支援先から直接感謝もされた」というものなのかなと理解しました。企業の視点からいえば、プロボノは社会貢献ではなく、本業の延長戦にある活動であり、CSRにもなる活動なのでは、とやはり私からは思えます。

 

吉田)昨今の自然災害の際、企業人のボランティア参加者が多く集まると聞きます。大企業ならではの問題として、社員個人が、自分の働きがどんな貢献につながっているのかがわからない点にあると思います。困っている人に直接手を差し伸べたいと心の内では思っていて、だからこそ、忙しい時間をやりくりしながらでも自分の能力を活かせる場所があるならば、参画したいと感じられるのでしょう。さらには、仕事以外の場所でも自分は役に立つのだということを確認したい思いも、多くの方が持っている欲求なのではないでしょうか。あるいは、自分は会社以外の場で役に立てるのか?という不安や畏れを抱いていて、万が一、会社から離れることが必要になった時にでも自分ひとりで立っていられるかを確認したい思いもあるのではないかと思います。

 

渡辺)アメリカで今、カスタマーサクセスという職業の認知が急速に広まっていて、データサイエンティストに次いで、求人数で2位になっている仕事があります。カスタマーサクセスというのは、お客様に物やサービスを届けるだけではなく、商品をお客様が使いこなしてハッピーになってもらうまでをも含めて考える姿勢が含まれています。ものを売った後の話ですね。2016年に最初の本が出てから本格的に始まって5年くらいの仕事ですが、世界中のカスタマーサクセスに関わっている人たちのコミュニティは、これまでの企業文化とは大分違う文化を持っています。このコミュニティの人たちは、自分が経験したこと、学んだことは積極的に教えよう、発信しよう、という文化を持っています。

例えば、勉強会や講演会をこのコミュニティ内でお願いしたら、無償で応えてくれることも少なくありません。ほかの業界だったら、講演料数十万という話を喜んで差し出す。狭いコミュニティの中ではありますが、みんなでお互いにボランタリーに自ら進んで影響し合う結果、コミュニティ全体の知的成熟度はとても早いんです。当然、最も多く発信した人が最も多くを学ぶという原理が働いています。

 

私は、この10年で、マネジメント改革の理論・手法であるTOC(Theory of Constraint)の普及・発展を目的とする三つの非営利団体(*1)と、「次世代スマート工場のエンジニアリング研究会」という二つの取り組みに出会い、積極的に関わってきました。会社の本業に直結するわけではありませんが、それぞれの活動と発展にコミットしてきま最初その結果、コミュニティの中で僕が1番得をしている。惜しみなく自分から提供すればするほど、メンバーから積極的に僕に話をしてくれてみんなと仲良くなれる。人脈とナレッジの部分で最も僕が得をしていて、自己評価として、報酬は発生しない「タダ働き」でも数倍のリターンがあったと思います。まず貢献しようとする、外に対して何かをしようとする姿勢は、必ず大きなリターンがあると経験からも思っています。

 

自分が何をすべきか一生懸命周りを見て探してきたので、10年間で二つの活動に出会うことができましたが、普通に仕事をしているだけでは滅多に出会えないし、探す時間もないと思います。少なくとも本業の隣接領域には本業にも繋がってくる必ず良いことがあると思いますし、プロボノには自分の目を開く出会いの機会も隠されているかもしれないと思っています。

 

嵯峨)プロボノもボランティアなので、基本は持ち出しですし、自ら動くことが原則なので、”Giving is Getting”と言われる原理は働くのだろうと思います。自分で働きかけるから返ってくる、ということなのでしょうか。

 

吉田)自分のこれまでを振り返ると、自分の探究心を出発点にどうなっているのかを突き詰めていきたいという気持ちが自分を突き動かして、色々な活動を仕事としてやっているというより、個人的な課題感で動いていったことが結果的にプロボノ的な関わりになっていたり、世の中ではボランティアと呼ばれる様な領域に入る様な活動も含まれていたのかもしれません。会社から課せられた仕事だけをしていたら、自分の探求していきたい領域に出会うことが難しいということはあると思います。探求していきたい領域がここだ!とみつかたったら、能動的に動くこともできるし、学習できる領域がものすごく広がり増えると思うんですね。「勉強しなさい」と一方的に課題を与えられるより、言われることだけをやっていたら良いというより、「自分で学んでいきたいな」「もっと知りたいな」という子どもみたいな探究心を突き詰めて学習する環境や時間を確保することが大事だと思います。

 

(*1)日本TOC推進協議会Theory of Constraints International Certification Organization、 教育のためのTOC 日本支部

 

人のニーズと目指す成果から発想する ー経営課題の解決を目指す最高の練習の場

 

渡辺)一方、プロボノの現場でも「貢献してやろう、必ず何か解決してやるぜ」と肩に力が入ってうまくいかないことはありませんか?貢献の気持ちが過度に働くと上から目線になってしまいますし、「知らない世界に交ぜてもらう」というくらいのスタンスがいいのでしょうね。

 

嵯峨)サービスグラントでは「大人の社会科見学」と言っていますがそうしたスタンスは大事だと伝えています。プロボノでは、NPOに対して何らか経営的なアプローチが求められます。情報発信、事業計画、組織運営の話など、相手が小さい組織でもひとつの経営体であり、プロジェクトの中で相手から返ってくる情報や見出される課題も経営レベルのものになります。つまり、いわゆる”ちょっとしたお手伝い”とは違って、経営との距離の近い本質的なフィードバックや情報が団体から提供されることは、企業人の経験の場としての価値もかなり大きいと思うのですね。

NPOは様々な社会課題に向き合い、それらを解決していきたいと動いているわけですが、社会課題の全てを一気に解決することはできないので、組織としてはどこを目指すのか、誰にどのような環境変化や状況改善をもたらすか、がNPOにおいては決定的に重要なところです。

先ほど、カスタマーサクセスの話が企業的な表現としてありましたが、NPOもベネフィシャリーズサクセスというのか、受益者の変化をアウトカム、ソーシャルインパクトと言ったりするような強い意識が働いているのがNPOセクターです。

カスタマーサクセスのソーシャル版として、誰にどういう成果をどうもたらすか?から、それに必要な具体的なツールは何で、支援策のソリューションは何かを発想して考え、具体的なソリューションを提供していくことが、プロボノのメインの活動であり、醍醐味だと思います。

 

渡辺)多くのNPOはすごい情熱と、こういうことを実現したいことはクリアだが、それを行動レベルにするときに、ここだとフォーカスを決め、そのためにどういう行動を起こすか具体化し、そのプロセスを構築することが得意でないことも多い。そこを企業の人がサポートすることがプロボノでは多い、という理解で間違っていませんか?

 

嵯峨)そうですね。こういうことをやっていきたい、この課題をなんとかしたいという思いははっきりお持ちですが、何をやっていったらいいのか自体も悩んでいる団体も多いと思います。

 

渡辺)聞けば聞くほど、大企業の視点からソーシャルセクターに積極的にプロボノで関わっていくことは、課題解決と人材育成を両立する「場」として最高なんですね。全く何やっていいかがわからない状況はさすがに困ってしまいますが、明らかに社会的な問題があって、こういうことをするといいとわかっていて誰もが賛成してくれているが、実行にあたってフォーカスを決める必要があります。効果の面で優先順位が高いこと、実際に手をつけられることから当面のフォーカスを決め、手段を決めて実行計画を作るということが必要だとわかりました。でも、これは大企業の今の文化や組織の中では上手にできなくなってしまっていることでもあると思います。

 

吉田)会社の中で、なかなか全体感を持って取り組むことが難しいですよね。プロボノだとちょうど良いサイズでそれができるというイメージが付きます。

 

嵯峨)過去にプロボノに参加された方から「仕様がはっきりしていない」というご意見をいただいた、というエピソードがあります(笑)

 

吉田)これから求められるのは、仕様が決まっていないところから、どうしたらいいんだろうと悩みながらも少しずつ前に進み、分かったことを振り返って体系化し、また調整していく進め方だと思うのですが、大手企業の多くはこうした経験を積める機会がないまま、いきなり本番に突入していると思います。これまでのたっぷり計画をして、上層部の判断でダメだと言われて振り出しに戻ることを繰り返す、というのとは違ったチャレンジの仕方、人との関わり方、相手との信頼関係の作り方を学習しなければいけませんが、大きな組織の中ほど、学習機会そのものを作り出すのが難しい現実があると私は思っています。ここ最近さらに「越境学習」のキーワードが注目を浴びていますが、プロボノ活動が企業の今変わっていかなければいけないステージにおいて、社員の教育的な側面にすごくマッチすると思いますし、座学では絶対に学べないことを体験を通じて学んでいける。また、体験だけではなくレクチャーも組み合わせながらやっていくことでさらに人材育成効果を高められるのではないかという可能性を感じています。

 

嵯峨)日本のものづくりの現場のモラルがソーシャルセクターに生かされることは大きいと実は思っています。例えば、さまざまな分野で相談事業に取り組んでいる団体がありますが、相談を担当するボランティアの確保が難しかったり、相談ニーズが多すぎて電話がつながる率が極端に低いという話があったり、問い合わせがあっても対応が追いつかない、相談内容を蓄積しているがどう対応されたのかの分析が必ずしもまとまっていない、といったケースもあると聴いています。このように、NPOのオペレーションの効率を高めたり、相談内容や対応結果をデータとして活用する検討を進めて政策提言につなげたり、相談員のマネジメントとして、相談員側のストレス軽減をして持続可能な相談体制を築いたり、といったことが考えられるのではと思います。特に相談事業などは、個別性の高い課題に対して”寄り添う”という発想を持って取り組む傾向が強いことが、仕組み化を難しくしている、ということはあるかもしれません。

 

渡辺)多くのNPO組織は、目の前の事業にマンパワーを取られて、仕事の仕組み化が不十分な場合も多いということであれば、そうした所にも企業人の経験をうまく活かしてイノベーションを共に経験する機会を持てることは双方にとってもウィンウィンな動き方だなと思いました。ありがとうございました。

 

 

 

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